丘野ルミ「ろうそく少女」(220円/1966年頃)



「ある彫刻家のもとで、弟子として学ぶ一作とその娘、真理子。
 居候をする一作達に、彫刻家の一家は様々な嫌がらせをするが、二人はじっと耐える。
 ある日、彫刻家の娘、玲子は、一作達が屋敷外れの古びた物置に出入りしているのを目撃し、何か秘密があるのではないかと考える。
 玲子が物置を調べてみると、施錠されたドアの鍵穴の向こうに真理子の顔とそっくりの精巧なマスクがあった。
 夜、真理子の寝室に忍んだ玲子は、真理子の顔のマスクを剥ぎ取る。
 そこには、半面が醜くただれた、真理子の素顔があった。
 実は、真理子が三歳の時、父親の一作は過って真理子の顔に煮えたぎったロウをかけてしまい、真理子の顔には深刻な傷が残ってしまった。
 その醜い傷跡を隠すために、一作は精巧なマスクをつくり、真理子は今までその秘密を気付かれずにきたのである。
 一作はその秘密を守ってもらうために、自身のつくった作品を師匠である彫刻家に譲る。
 しかし、玲子は学校でクラスメート達に秘密をばらし、クラスメート達は強引に真理子のマスクを剥ぎ取ってしまう。
 自分のマスクを取り戻そうと、真理子は車道にとび出し、トラックに轢き殺されるのであった。
 一作は、真理子の死体を抱き、悲嘆に暮れながら、彫刻家を責めるが、冷たく屋敷を追い出されてしまう。
 復讐のみを胸に、一作は真理子の死体をロウで包んで、蝋人形を作り上げ、その後、首吊り自殺。
 展覧会に出された、その蝋人形は、作者不明のため、彫刻家の屋敷に運び込まれる。
 そして、蝋人形に埋め込まれた真理子の復讐が始まるのであった…」

 丘野ルミ先生は東京漫画出版社にて「おてんばシリーズ」や「現代っ子シリーズ」といった一連の少女マンガで活躍された方です。
 読んだ限りでは、その作風は「明朗」かつ「ハート・ウォーミング」。
 ただ、それ以上でも以下でもないため、マンガに深みというものはあまりないように感じます。(それもまた良しで、意外と好きです。)
 情報が全くと言ってないので、推測なのですが、貸本時代の終焉と共に筆を折った模様です。(注1)

 ともあれ、そんな売れっ子作家であった丘野ルミ先生が当時の流行を追ってか、怪奇マンガを幾冊か(詳しい冊数は不明)、残しました。
 その作風は「明朗」かつ「ハート・ウォーミング」な絵柄で、「ゲテモノ」怪奇を描くというもの。
 当時のチビっ子達はこういうマンガでも恐怖に震えたのでしょうが、今現在見ると、かなり「ユル〜い」です。
 そのユルさを愛する(特殊な)人達でもいるのでしょうか、丘野ルミ先生の貸本怪奇マンガは現在、なかなかに入手が困難です。

   さて、内容についてですが、実際は、蝋人形です。
 でも、そこにあえて「ろうそく少女」と名付けるセンスがナイス。(ラスト付近にてようやく、何故「ろうそく」なのかが明らかになります。)
 頭に「ろうそく」を立てて、ぼうぼう燃やしている御人は幾度か見かけておりますが(例@例A)、自らが率先して燃えると言うのは新機軸かもしれませんね。
 見所は何と言っても、ラストの真理子の玲子への復讐シーン!!
 ここがあまりに「間」とか「緊張感」とかいろいろと肝心なものが抜けちゃっております。
 激しくネタバレになるので、本来はすべきでありませんが、ちょっと多めに画像を付けておきます。

 遂に、玲子の前で正体を現した真理子。真理子が玲子に恨み節を並べている間に、玲子はこそこそ逃げようとしますが、失敗。真理子は玲子に顔の皮を剥ぐと詰め寄ります。許しを請う玲子。

 と、ページをめくると、素知らぬ顔で真理子に燭台を投げつける玲子。しかも、全く効果がなく、更なる窮地に陥ります。燭台の火がカーテンに燃え移り、辺りは火の海となります。火に煽られ、蝋人形のロウが溶け出し、中から真理子が姿を現すのでした。
 んで、画像がなく申し訳ないのですが、蝋人形の中から現れた真理子は支えを失ったためか、何もできずにあっさりその場にダウン。真理子の死体に乗りかかられた玲子は発狂し、屋敷は燃え落ちてしまうのでありました。おしまい。
 う〜ん、「ろうそく少女」は「ロウ」が溶けたら、ダメなもんなんですね…って、アレ、やっぱり「ろうそく」じゃなくて、「蝋人形」ですやん。

・注1
 貸本時代の末期に、「死刑囚の子」等、青年向けの作品も物しておりますが、絵柄がしっくりこない印象がありました。
 良くも悪くも、低年齢層向けの絵柄なのであります。(それが悪いとは決して言いません。)
 でも、その絵柄で「死刑囚の子」とか扱われてもなあ…。
 ちなみに、怪奇マンガで取った杵柄か、ガスバーナーで目を焼くシーンがあったりします。

・備考
 ビニールカバー貼りつき。糸綴じあり。pp10・11に何かの果実が挟まり、pp5〜26まで上部に目立つシミあり(コマにはほとんどかからず)。他にも、目立つシミ多し。後ろの遊び紙に「41.11.20」というスタンプあり。

2016年7月12日 ページ作成・執筆


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