谷ゆきお「亡魂の沼」(220円)
「堀秀彦と妹のさちえは、山奥の底なし沼を探検に出かける。
そこで、二人は巨大な亀に乗った、美しい少女の姿を目にする。
帰宅後、秀彦は家族からそれは沼人の一族の子供、沼童(ぬまわら)だと教えられるが、その姿を見たものは命はないと言われていた。
秀人は沼童である少女に恋心を抱き、再び底なし沼を訪れる。
そこに少女の姿はなかったが、岩の下から秀彦を呼ぶ声があった。
声に従って、秀彦は落石を利用して、岩を撤去する。
そこには人骨があり、女性の幽体が秀彦の前に現れる。
約束通り、女性の幽体は秀彦を沼の底にある、沼人の部落に案内し、沼童の少女の家の近くに案内する。
少女の名前はみずほと言い、彼女は沼人一族の唯一人の末裔であった。
沼人は警戒心が強いため、女性の幽体は、秀彦がみずほと親しくなれるよう、作戦を立てる。
それは、女性の幽体が魔力で出現させた怪獣にみずほを襲わせ、秀彦に彼女を助けさせる、というものであった。
果たして作戦はうまくいくのであろうか…?
そして、女性の幽体の正体とは…?」
「蟻人の森」や「めくら水神」と並ぶ、キミョ〜キテレツな傑作であります。
基本は「河童」でありましょうが、そこを「沼人一族の最後の少女」に置き換えたところがミソ。(注1)
また、この少女が、御坊茶魔(「おぼっちゃまくん」)よりも何十年も先駆けて、「亀使い」であるところも味わい深いです。
そんな沼童の少女と主人公の間の恋愛を描くのかと思いきや、沼童の少女をゲットする作戦がメインの展開となります。(まあ、現実問題、そうかもね…。)
しかも、その作戦とは(粗筋にも書いたように)「怪獣に少女を襲わせ、主人公に彼女を助けさせる」という、あまりにリスキーかつ強引なもの。
んで、後半はがっちり「怪獣」マンガへとなだれ込んでいっております。
岩を飲み込んで、その破片を口から噴射するジャリゴン(ジャケット・イラストにも描かれてます)や、毒気を含んだ泡を吐くカニゴンという、名前からしてチープな怪獣が、亀の大群と戦う描写は、当時のマンガの中でも、一線を突き抜けた破天荒さだと思います。(それにしても、ジャリゴン、弱い…。)(注2)
いやはや、当時、これだけの「怪獣」マンガを描いた、その想像力に感服するばかりであります。(でも、B級ですが…。)
・注1
沼人の部落の描写等は、水木しげる先生の漫画を参考にされたのでしょうか?
個人的には「かっぱの皿を剥ぐ仕事を持つ男の葛藤を描いたマンガ」(タイトル失念)あたりが頭に浮かんだのでありますが、もっとメジャーな「かっぱの三平」が影響を与えているのかもしれません。
長い間、水木しげる先生の漫画を読んでおりませんので、はっきりしたことが言えないのであります。
・注2
作中では「ウルトラマン」や「ゲゲゲの鬼太郎」が触れられております。
円谷プロの特撮ものの影響はあったのでしょうが、何度も書いておりますように、私は怪奇もの以外、特撮には興味がほとんどありません。
第一、「ウルトラマン」をまともに観たことがないという時点で、論外です。
「怪獣」マンガについては、「特撮」マニアの方々の更なる検証を待ちたいと思います。
・備考
ビニールカバー貼り付け(一部が欠損)、また、それによる本体の歪み。糸綴じあり。前の遊び紙、書き込みあり。読み癖あり。目立つシミ・汚れあり。pp9・10、下部に少しだけコマにかかる欠損あり。pp73〜76、ページの中央辺りに縦の折れ痕あり。後ろの遊び紙、欠損。
2016年9月5日 ページ作成・執筆