谷ゆきお「蟻人の森」(220円)



「休火山、四峰岳に、行方不明になった兄を捜しに来たハルミ。
 山中にハルミが蒸気泉を発見すると、そこから「蒸気の精」の兄妹、スイジとヨオキが現れる。
 妖精の兄妹に「蒸気羽根」を背中につけてもらうと、ハルミは自由自在に空を飛ぶことができるようになる。
 だが、飛行中、妖精の兄妹とはぐれ、時間切れにより「蒸気羽根」が消失してしまい、落下。
 気絶しているところを、人間の大きなほどもある、知能を持った蟻人に捕らえられてしまう。
 ハルミは蟻人に連れて行かれたのは、地下にある未来的なお屋敷であった。
 そこで、ハルミは蟻人を支配する魔女と会う。
 魔女はハルミに自分の召使になるよう言い、ハルミは反発。
 しかし、魔女が彼女の兄の行方を知っている様子に、ハルミはしぶしぶ魔女の言葉に従う。
 魔女の屋敷で暮らし始めて一週間後、ハルミの部屋の壁の向こうから何者かの気配がする。
 それは、同じく魔女に拉致された動物学者、ブライ博士が、隠し通路を使って、ハルミの部屋にやって来たのであった。
 ブライ博士は魔女により新人種をつくる研究をさせられており、その研究が完成したら、世界中が魔女の楽園になると話す。
 その研究室をハルミが訪れた時、ある実験が失敗、濛々と立ち上がった水蒸気の中から、「蒸気の精」の兄妹が姿を現す。
 彼らの手引きにより、ハルミとブライ博士は魔女の屋敷からの脱出を図るのだが…」

 谷ゆきお先生の「奇談シリーズ」では、「おとこ足の少女」(注1)と並んで、有名なものでしょう。
 シュールな魔女の屋敷の描写や新人種を開発する研究室の描写(かなり危険!!)等、奇想炸裂です。
 有名な「熱線銃を持った蟻人の群れ vs 蒸気の精の群れ」の空中戦の描写は、脳が沸騰して、蒸発してしまいそうな、力の入れようです。(下の画像を参照のおと)
 まさしく言葉通りに「fantastic」な逸品なのですが、惜しむらくは、想像力をもう少しストーリーにも配分して欲しかったところです。
 ネタばれですが、ラスト、妖精からもらった魔よけの短剣でハルミは魔女を首をはねると、首の断面の穴からハルミの兄が現れ、「魔女の首は胴体からはなれると大爆発を起す」(p125)とのことで火山が大爆発するという、テキト〜過ぎる展開になっております。(力切れ?)
 「でも、そこがいい!!」(by「花の慶次」)と言われりゃ、まっ、そうかもね。
 それにしても、この作品のテンションの高さに加え、丁寧なペン・タッチに、谷ゆきお先生がさぞかし楽しんで描いていた様子が窺えて、ほっこりしてしまいます。(余程、描きたいテーマであったのでしょうか?)


・注1
 唐沢俊一氏の発行した「UA!ライブラリーB」にて復刻されております。(併録/小林将二「黒い真珠」)
 原本を持ってないので、定かではないのですが、一応は完全版ではないでしょうか?
 ただし、氏による「すべてのマンガはクズである」という解説文には、人それぞれの意見があるとは思いますが、個人的には首をかしげてしまいます。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました。ただ、その際、力み過ぎて、表紙カバーの上下、小さな裂けあります。)。表紙に少し歪みあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2017年2月11日 ページ作成・執筆

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