三田京子「怪談妖恋ねむり草」(220円)



「露香は七歳の時、小児麻痺にかかって以来、車椅子生活となる。
 家に引きこもりがちの彼女にとって、詩作だけが心の慰めであった。
 十六歳の時、露香は、しばしば窓外を通り過ぎる青年に恋をする。
 しかし、自分の障害を気にかけ、彼の目につかないよう、ますます家に引きこもるようになる。
 青年と結ばれる空想を幾度とするものの、心は満たされず、悶々とした日々を送る。
 季節は廻り、春となった頃、露香は再び歩けるように練習を始める。
 身体は思い通りにならず、失意の日々が続くが、ある夜、彼女は急に歩けるようになる。
 喜び勇んで、彼女は青年のもとに駆けていくと、彼は山中である花を摘み取ろうとしていた。
 露香は彼に花を摘み取らないよう声をかけ、それがきっかけで、二人は知り合う。
 二人はすぐに打ち解け合い、麓まで語らいながら降りていく。
 翌朝、露香が目を覚ますと、両足はやはり不自由なままであった。
 だが、衣装には昨夜出歩いた痕跡が残っていた。
 以来、夜ごと、露香は同じ山中で青年と逢瀬を重ね、遂には、青年から結婚を申し込まれる。
 しかし、露香は、自分の両足の麻痺を知られることを危惧し、結婚を恐れる。
 更に、露香は、度重なる逢瀬で衰弱し、寝付いてしまう…」

 「不思議な花が、出会うことのない二人を結びつける、悲恋物語」
 …なのですが、不思議な花の説明がほとんどなされてないので、一度読んだだけでは内容がよくわからないと思います。
 また、不意に挿入されるヒロインの空想や、装飾過多の「ぽえみ〜」な挿入文が、三田京子作品に独特の読みにくさを倍増させております。
 でも、ストーリーだけ見ると、個人的には、かなり良いと思います。
 社会派の三田京子先生だけあって、一見なよなよしているヒロインが意外とガッツあるところも魅力的に感じました。

 ちなみに、巻末の「読者のページ」にて「自分の作品がテレビドラマ化されるのが私の夢です。」(p122)と書かれております。
 三田京子先生はすでに鬼籍に入られましたが、今からでも遅くはありません
 半世紀の時を超えて、「三田京子ブーム」が再燃することを心から祈っております。
 個人的な希望を挙げると、「死人形リサ」なんかいいんじゃないでしょうか。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、それによる本体の歪み。糸綴じあり。表紙の裏と前の遊び紙の絵を鉛筆でなぞった跡あり。後ろの遊び紙に、貸出票の剥がし痕とスタンプあり。

2017年6月23日 ページ作成・執筆


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