「怪談・74」(1965年初め頃?/220円)
収録作品
・古賀しんさく「もてない奴」
「顔も性格も悪くはないが、純情過ぎて、女性に積極的になれない青年。
しかし、彼には想う相手がいた。
いつも公園で子守をしている女性。
彼女と近づく為に、青年が利用したのは腹話術の人形。
青年は以前、腹話術を習っていたことがあり、同じ子守をしている者同士で仲良くなろうという魂胆。
作戦はうまく行き、結婚までこぎつけるが、彼女にも秘密があった…」
この話は「エコエコアザラク」でもリメイクされていたような気がします。
どう考えても、メチャクチャな話なんですが…そこがいいなあ…。
・小島剛夕「さぎりの梵鐘(ぼんしょう)」
「とある山寺が狭霧(さぎり)に閉ざされると、梵鐘(寺院の釣鐘)がかすかになる。
すると、一人の侍がやってきて、梵鐘と語らう。
それにまつわる悲しい話とは…。
侍の京之助と、里の百姓娘の由美は、身分は違えど、愛し合う仲であった。
由美は実る恋とは思わなかったが、京之助は真剣だった。
京之助が殿のお供で都に出て、数年は帰れないことになった時、京之助は「行末の誓いのしるし」として母の形見の鏡を由美に渡す。
が、里の寺が、領主の菩提寺になったことにより、急遽、梵鐘をつくることが決定し、鏡を寄進せねばならなくなる。
一度は寄進したものの、鏡は二人のものと思いなおし、寺の和尚に鏡を返してもらうよう頼み込む。
願いが通じ、由美は鋳込場に駆けつけるが、鏡はもう炉鍋の中だった。
絶望した由美は…」
個人的に、非常に美しい、心にしみ入る一編であります。
悲恋ものに、「鏡」というそれ自体が幻想的なオブジェをうまく絡めております。
埋もれてしまった傑作と形容しても、いいんじゃないでしょうか? 復刻が望まれます。
・サツキ貫太「指」
「敗戦後、片腕を失うというハンデを乗り越え、殺し屋として名をはせた男。
戦争で残された身内は弟のみ。弟のために彼は何でもした。
弟がピアノを習いたいと言えば、ピアノを買ってやり、一流の教師もつけ、弟は新進ピアニストとなった。
ある日、自分の命を狙った殺し屋が、病気の妻のために仕事を引き受けたことを知り、初めて良心の呵責を覚える。
良心の呵責に苦しむ男は、旅に出て、海辺で投身自殺を図るが、とある寺の住職に助けられ、そこでようやく心の安らぎを得る。
ところが、新聞で弟が変死したという記事を読み、真相を突き止めるため、彼は東京に戻る…」
・いばら美喜「刺青(ほりもの)」
「人を殺すことに何の躊躇いもない殺し屋の男、辻勝美。
彼の父親、幹太郎は、名の知れた彫り物師だった。
父親が瀕死という話を聞き、男は家に戻る。
そして、父親が病身でありながら、銃で脅し、背中に刺青を彫らせる。
父親は息子に人殺しをしないよう臨終の言葉を遺すが、男は鼻にもかけず、死体をほったらかしにしたまま、立ち去る。
一週間後、傷が癒えて、包帯を外すと、刺青は、ターバンを巻いて、顎鬚を生やした、インド(?)の行者というものだった。
おかしな絵だと思いながらも、青年は次の殺しに取り掛かるのだが…」
「オール怪談S」からの再録です。カラー付きの扉絵と巻頭紹介はそちらのページをどうぞ。
巻末に、「ひばり書房・つばめ出版」旅行会が都内一周のプランを立てる「脱線旅行」、作家一同を集めたXマス・パーティーの模様を描いた「スタアと隠し芸」という二つの記事があります。
「脱線旅行」には、旅行会が1965年をもって二十周年目を迎えるとの記述があります。
ひばり書房って戦後の1946年から存在していたのでしょうか?…謎です。
・備考
状態悪し。ビニールカバー貼り付け。ホッチキスによる綴じあり。全部の遊び紙下部欠損。随所に「名古屋マンガ図書館」の印あり。pp33・34の中部に破れあり。p64(小島作品)に赤サインペンによる落書き(?)あり。
2014年11月5・6日 ページ作成・執筆
2019年8月15日 加筆訂正