「怪談・81」(1965年頃/220円)



 収録作品

・古賀しんさく「分裂しよう」
「自転車を使った軽業を得意とする曲芸師、勝田一夫。
 しかし、彼の芸は古いとみなされ、このままでは飯を喰っていけない。
 ある日、彼は風船を持った男の子を目にして、新しい芸を思いつく。
 それは、自転車で軽業をしながら、身体のパーツを取り外すというものであった。
 そのアイデアに憑りつかれた彼は、早速、分厚い医学書に目を通し、人体の全てを知ろうとする。
 挙句の果てには、実験台として死体を手に入れようと、墓を暴いたりする始末。
 だが、練習次第でどうこうなるものでなく、思い余った彼は…」

・小島剛夕「月の尾花路」
「陰葉流道場の跡取りである彦四郎。
 彼は父親から内弟子以下に扱われ、また、剣の修行に関しても容赦がない。
 非道な仕打ちに心を痛め、彼が野にさまよい出ると、ススキの中に、花畑が一面に広がっていた。
 そこで、彼は、花畑の持ち主という乙女、尾花(注1)と出会う。
 彼女は彼の母親の墓に備える花を選び、彦四郎は父親の愛情に飢えていることを彼女に打ち明ける。
 その日以来、彼の胸には絶えず尾花の面影が付きまとう。
 腑抜けた彼は父親に叱責されるが、その時に、狂死したと伝えられる兄の死の真相を知る。
 兄はある女に心を奪われ、大事な御前試合で敗北、そして、陰葉流の名に傷を付けた兄を実の父親は斬ったのであった。
 その事実に心を痛めた彦四郎は、知らず知らずのうちに、尾花の花畑に足が向く。
 そこで、尾花が「落葉」という舞いを舞っていた。
 尾花の扇子さばきから、彦四郎は剣の理を見出し、父親を見返そうとするのだが…」
 アンソロジー「妖怪マンガ恐怖読本」(文春文庫)にて復刻されております。
 本の入手は容易ですので、興味ある方は読んでみてください。

・サツキ貫太「不死身」
「年は違うが、生まれた日が同じの、二人組の男。
 彼らは、一世一大の賭けとして、工場の金庫を狙う。
 金庫には一億円もの大金が眠っているものの、警備は厳戒、マシンガンを持った警備員が配置されていて、手も足も出ない。
 二人が工場を遠くから窺っていると、彼らの近くの鉄路に黒マントの男が立っていた。
 男はそのまま通過列車に轢かれてしまうが、何事もなかったように平然としている。
 二人が男に無事かどうか尋ねると、男は高笑いをして、今日一日は不死身だと話す。
 彼の先祖の研究により、「人間は生まれた日によって一年のうち一日だけどんなことがあっても死ぬということがない」のであった。
 そこで、兄貴分の男は一計を案じ、午前零時を過ぎた時に、男をナイフで刺し、男の本を奪う。
 その本によると、二人の誕生日、四月十日生まれの人間はズバリ当日が不死身と書かれていた。
 勇気づけられた二人は工場を強襲するのだが…」
 奇妙なアイデアの光る作品です。(元ネタあるのかな?)
 いばら美喜先生の「大天才」(「オール怪談・81」収録)の影響があるように感じました。



・池川伸治「マリアのいる世界」
「ピクニックを楽しみにする少女、洋子。
 彼女は母親を呼びに行った際、奇妙な空間に迷い込んでしまう。
 そこでは、現実世界が実体を持たず、母親に近づいても、すり抜けてしまう。
 戸惑う洋子の前に、マリアと名乗る少女が現れ、この世界を案内すると話す。
 マリアが案内したのは、地獄であった。
 そして、洋子は死後の世界を垣間見ることとなる…」
 意外と珍しい気がする、池川伸治先生によるオカルト・マンガです。
 ある女性のファンからの話しから着想を得て、描かれたと、ラストに述べられてます。
 何というか、独自の解釈に基づいた「あの世」の描写が、作者の熱意と反比例して、うさん臭さ満点です。
 また、地獄の説明だけで、極楽の説明がなく、片手落ちなのも、池川伸治先生らしいと思います。

・注1
 尾花は「ススキ」のこと。
 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」でお馴染みです。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。pp16・17(古賀作品)にひどい汚れがあり、他のページに滲みている。p23、p25(古賀作品)、線を青いペンでなぞっている。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年10月30日 ページ作成・執筆

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