わたなべまさこ「プルトンの息子たち」(1993年6月23日初版発行)

 収録作品

「プルトンの息子たち」
「花のようなリリペット」
・「J・スミス氏の赤ちゃん」
「ニューヨーク。
 夕方、総合メモリアル病院に、妊娠女性の腐乱死体が運び込まれる。
 死体は死後一か月経っており、身元も、自殺か他殺かさえ不明。
 しかも、死体の周囲には、黒山羊の毛がたくさん落ちていたという。
 日をまたいで、午前三時、病院の新生児室から、赤ん坊が姿を消し、騒動となる。
 ただ一人、スミス夫婦の赤ん坊だけが無事であったが、未熟児のはずが、やけに大きくなっていた。
 事件は迷宮入りとなり、赤ん坊は、グリニッチ通りにある、スミス夫婦のマンションへとやって来る。
 以来、壁に大きな穴が開いたり、冷蔵庫からは生肉が消えたりと、おかしなことばかり。
 更に、マンションでは住人の不審な死を遂げる。
 その死体には血が一滴もなかった…」

 「わたなべまさこ名作集」の一冊で、「ホラー/ファンタジー」ものが三作、収録されております。
 その中で拾いものは「J・スミス氏の赤ちゃん」。
 恐らく、1970年代に少女漫画雑誌に掲載されたもので、「人喰い赤ちゃん」の凶行をストレートに描いた短編です。
 同じ、「悪魔の赤ちゃん」をテーマとした作品と言えば、「黒天使シンセラ」なんかがありますが、「J・スミス氏の赤ちゃん」の方は、歯も生えないうちから、新生児室の赤ん坊をたいらげるのみならず、母親の乳房を喰いちぎる凶暴さで、ペーソスのかけらもないところが凄過ぎです。
 でも、こういう、徹底して情け容赦のないところも、実にわたなべまさこ先生らしいなあ〜。(個人の感想です)

・備考
 カバー、若干痛み。中割れ。

2020年10月16日 ページ作成・執筆

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