まつざきあけみ「醜い人」(1991年9月20日初版発行)

 収録作品

・「醜い人」(1987年「フィール」)
「さと子は自分の姿も心も醜いことを自覚していた。
 中学校の時、彼女は百合香という少女と親友になる。
 百合香は美しく、頭が良く、大地主の娘で、頭も顔も悪く、貧乏なさと子とは正反対なのに、やけに気が合った。
 二人は親しく付き合っていたものの、さと子は陰で百合香の不幸を願う。
 その願いも空しく、百合香は一流高校に入学し、短大卒業後、一流企業のエリート社員、保彦と結婚する。
 一方のさと子は中学卒業後、町工場で働いていたが、百合香の新婚家庭の家政婦に雇われる。
 子だくさんな家庭で育ったため、さと子には家事などお茶の子さいさいで、保彦・百合香夫婦に重宝される。
 給金もよく、さと子もこの仕事が気に入っていたが、ただ一つの不満は新婚夫婦に全く波風が立たないこと。
 不倫の一つでも起きないものかと妄想を逞しくするが、二人はあまりにラブラブで、そんな様子は微塵もない。
 だが、ある日、さと子が二階で昼寝をしていると、エステティックサロンから帰って来た百合香が空き巣と鉢合わせる。
 幸い無事であったが、保彦は百合香が空き巣に強姦されなかったかと執拗に尋ねる。
 さと子はこれを利用して…」

・「華麗なる殺意」(1989年「コミックバル」)
「麗美・留美は双子の姉妹で、共に役者を目指していた。
 双子と言っても、性格は対照的で、麗美は華やかで積極的、一方の留美は大人しく控えめであった。
 その麗美が「サロメ」の舞台で主役に抜擢される。
 公演を間近に控えた晩、彼女は一人で劇場の舞台で立ち稽古をする。
 そばには留美も控えており、留美もサロメを舞台で演じるが、奈落が急降下し、留美は転落死する。
 麗美はショックを受けるも、舞台は大成功し、これをステップに彼女は女優としての地位を確立する。
 そして、三年後、「サロメ」を再演することとなる。
 同時に、陽(ひかる)がイギリスから帰国する。
 彼は留美の死後、演劇の勉強のため、渡英していた。
 麗美は彼と再会し、想いを打ち明けるが、彼が愛していたのは留美であった。
 ショックを受けた麗美は自分が留美だったら…と強く願う。
 以来、彼女の行動や様子が死んだ留美を彷彿させるようになる。
 皆は留美の霊が麗美に憑いていると考えるのだが…」

・「愛の陽炎」(1990年「フィール」)
「西村さやか(29歳)はある会社の経理事務員。
 彼女には圭という六年越しの恋人がいたが、彼は画家志望のダメンズであった。
 彼は立派な画家になると口では言うが、一枚の絵も描かず、彼女から金を貢いでもらってばかり。
 妹の真理は彼とは別れるよう勧めるも、今の彼女にとっては彼だけが全てであった。
 だが、彼のために、彼女は会社の金を使い込み、額は二千万円に達する。
 それを会社のお局の黒川に知られ、晩の河原で話し合いをしている最中、さやかは彼女を死なしてしまう。
 途方に暮れるさやかに圭と真理はある方法を提案するのだが…」

・「彼はネプチューン」(1989年「おまじないコミック増刊」)
「友香は中学二年生の少女。
 七年前の小学一年生の時、彼女とその両親、いとこの反町悟は車で行楽に出かける。
 その帰りの夜、彼らを乗せた車は対向車のヘッドライトに目が眩んだために崖下に転落し、両親が死亡する。
 以来、彼女は叔母の一家に育てられ、彼女は悟を兄のように慕っていた。
 だが、最近、友香はその事故の夢をよく見るようになる。
 夢では両親と共に、何故か悟も死んでいた。
 夢をきっかけにして、友香は事故の記憶を徐々に取り戻していく。
 そして、海辺でのテニス部の強化合宿で真実が明らかとなる…」

 「真夜中の子供」に続き、レディース誌に掲載された作品を収録しております。
 若干アダルト向けですが、生臭い内容を扱っていても、下品にならないあたりに、まつざきあけみ先生の「美学」を感じます。
 駄作はありませんが、個人的なお気に入りは、ダメンズと偽装自殺が絡む「愛の陽炎」。
 ムリヤリなハッピーエンドですが、まあ、こういうのもいいんじゃない。
 あと、「彼はネプチューン」はどこかで読んだ話だと思っていたら、莨谷弥生先生「白光の記憶」(「魔女イルマ」収録)とかなりかぶります。
 元ネタは恐らく、海外のSF作品なのではないでしょうか?

2023年5月26・27日 ページ作成・執筆

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