池川伸治・他「月夜@」(220円)
収録作品
・池川伸治「墓母」
「東京の世田谷。
母親を亡くした少女、松田松枝。
彼女は母親の死を受け入れることのできず、自分の一念で母親を生き返らせることを決意する。
以来、起きている間は、ひたすら母親が生き返ることを太陽に祈り続ける。
ある日、雷雨の中、松枝が墓場に駆け付けると、彼女の一念が通じ、母親が墓から蘇える…」
「月夜」で連載された作品で、後に「奇母・奇墓」とタイトルを変え、単行本化されております。
・さがみゆき「月夜の美少女」
「満月の夜、達也が、ある島の浜辺で佇んでいると、笛の音色が聞こえてくる。
その音色の方に向かうと、着物姿の、美しい娘が笛を吹いていた。
達也が彼女の美しさに見とれていると、彼女は自分は美しくはなく、満月が自分の姿をかばっているからと話す。
そして、彼女が笛を吹けるのは、このような満月の夜だけであり、達也に自分を自由にしてくれるよう頼む。
戸惑う達也を、彼女は海岸近くにある家へ連れて行き、満月が出ている間に、自分をこの家から出してくれるよう言い残すと、その姿は消えてしまう。
達也は家の中に入り、彼女を捜すのだが…」
・平乃治人「クレオパトラの涙」
「大松明夫は、婚約者の真佐子に突如、婚約を取り消される。
彼は真佐子に理由を説明するよう求めるが、けんもほろろな対応。
更に、彼女にプレゼントした、母の形見の宝石「クレオパトラの涙」も返してはくれない。
実は、彼女には本命の婚約者がおり、宝石目当てに彼と婚約したのであった。
そして、彼女の結婚式の前日…」
・杉戸光史「黒バラ奇人」
「映画の帰り道、佐智子と秋子は、無人の屋敷に立ち寄る。
その屋敷の庭には、見事なバラ園があった。
咲き誇る白バラの中に一つ、黒バラがあり、佐智子がそれを取ろうとすると、トゲが刺さる。
彼女はそのまま、意識を失い、気が付くと、見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。
部屋には、屋敷の住人の、太田博彦という青年がおり、佐智子は彼の美男子ぶりにうっとりする。
彼は彼女の友達になりたいと言い、明日の夜、一人で屋敷に来るよう頼む。
佐智子はルンルン気分で屋敷を出るが、庭で、白バラを頭に付けた娘(タイトル表紙を参照のこと)に呼び止められる。
彼女によると、黒バラの精は悪魔で、佐智子に彼とは会わないよう警告をするのだが…」
少女スリラー短編集「月夜」は当初、宏文堂で出版されておりましたが、曙出版・文華書房で復刊することとなり、その創刊号です。
池川伸治先生が代表を務める太陽プロの面々で固めており、編集長は杉戸光史先生、読者コーナーの担当は川辺フジオ先生となっております。
巻末のバラエティコーナーはなかなかの熱気で、ハッスルしまくりです。
個人的に、この単行本で最も面白かったのは、杉戸光史先生の「黒バラ奇人」。
吸血鬼ものですが、「血を吸う薔薇」を扱っているところに着眼点の鋭さを感じます。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり、それによるカバーの痛み。前後の見開きにセロテープ痕。小口の底にゾッキ線あり。小口、前の遊び紙、p11、p33、p43、p57、p61、p81、p85、p95、p105、p117、p127、「原図書」のスタンプあり。
2020年4月10日 ページ作成・執筆