「オール怪談・35」(170円)



 収録作品

・いばら美喜「黒い花」
「行方不明になった妹のことを尋ねるため、生花の師匠のもとを訪れた青年。
 結局、妹の行方はわからなかったが、師匠の屋敷で青年は妙なものを目にする。
 それは呼吸をし、人間の言葉を解する、黒い花であった。
 しかも、その花は動物のように動くという代物で、青年が近づくと、彼に飛びかかってくる。
 釈然としないまま、青年は、師匠のもとを去るが、上着を忘れていたことに気付き、引き返す。
 すると、師匠が弟子の女性の首を絞めて、気絶させるのを目撃。
 師匠は女性を抱えて、奥のビニールハウスに向かう。そこには黒い花が群生していた…」
 主人公と師匠の植木ばさみ対決は、「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」(1960年/ロジャー・コーマン監督)の「メスを持ったサディストの歯医者 vs 歯を削るドリルを持った主人公」のバトルをちょっぴり連想いたしました。
 「オール怪談・78」にて再録。

・小島剛夕「おぼろ舞」
「伊賀の里。
 うら若き忍者の次郎とおぼろ。
 おぼろは師匠の娘。おぼろの秘術はとても人間業とは思えぬほど、優れたものだった。
 特に、宙をふわりと舞う「おぼろ舞」は全く謎に包まれていた。
 一方の次郎は、戦に巻き込まれ両親を失った時に師匠に拾われて、育てられた身の上。
 二人は惹かれあうが、おぼろは「私達は忍者なのよ…常人でないのよ……」「人なみの心をもったら、術の破滅……つまり、死あるのみよ」と頑なに心を開こうとしない。
 関が原の合戦の一月前、二人に、大阪城に忍び込み、反徳川派の連盟書を盗み出す使命が与えられる。
 逃げる途中、次郎は銃弾で傷つき、追い詰められる。
 次郎が逃げるように言うにも関わらず、おぼろは瀕死の次郎の胸元にすがりつく。
 そして、次郎が憧れていた「おぼろ舞」の秘密を明かすのだった…」
 「怪談・89」にて再録。扉絵をご覧になりたい方はそちらのページにどうぞ。

・古賀しんさく「奇妙な葬式」
「青年は、衣料品店で自分にそっくりなマネキンを見かける。
 すると、そのマネキンが彼のアパートの部屋を訪ねて来て、保険金詐欺をもちかける。
 いとこを受取人にして、彼に保険金を掛けた後、マネキンが彼の代わりに死んでくれるというのだ。
 青年はこの話に乗り、準備を整えてから、マネキンは青年と入れ替わり、いとこと共に登山する。
 そして、荒天の中、登山を決行し、マネキンは無事に(?)転落死を遂げる。
 とんとん拍子に事は進み、あとは、保険金を受け取ったいとこと金を分けるだけだったが…」



・北風三平「黄金の酒」
「酒造会社に勤める青年が向かう、遠く山奥にある施設。
 そこは原酒を長期間醸造させるための施設で、社員は彼一人。
 と言っても、厳密には一人ではなく、彼は弟のミイラを持ち込み、地下に保存していた。
 彼の弟は成績優秀で、東大でミイラの研究をしていたが、急逝。
 その遺言に従い、彼をミイラにしたのである。
 ある日、施設を地震が襲い、幾つかの樽から原酒が漏れ出す。
 その原酒が化学反応を起こし、金色に光るカクテルが出来上がるが、そのカクテルは死体を蘇生させる力があった。
 青年は弟のミイラを蘇らせ、自身もカクテルを飲んで、いい感じで酔っ払う。
 だが、弟のミイラは相変わらずミイラ狂で、遂には、ハイキングに来た女性を襲ってしまう…」
 ストーリーは面白いのに、オチがイマイチなのが残念。
 ちなみに、主人公はちょっちゅうウクレレを弾いており、弟の名前は信二ですので、ウクレレ漫談の故・牧伸二をちょっぴり意識していたのでしょうか?

・備考
 カバー欠(画像はカバーのコピー)。裸本の背表紙、マジックで文字になぞり。糸綴じあり。前後の見開きのノド、紙テープにて補強。p9、p60、p64、テープで補修あり。

2018年10月17日 執筆・ページ作成

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