「オール怪談・78」(1967年春/220円)



 収録作品

・浜慎二「おふくろ」
「ボクサーを夢見る、高校生の青年。
 息子のみが生きがいの母親は心配でたまらない。
 ある夜、試合からの帰り道、青年は轢き逃げに遭い、死んでしまう。
 その知らせを聞いた母親はショックで気がふれてしまう。
 そして、息子の死を理解せず、息子は必ず帰ってくると断言するのだった。
 一方、青年を轢き逃げした男は、うまく隠しおおせていた。
 轢き逃げをした翌日、やむを得ない事情で男が雨の夜に車を出すと、後部座席に青年が座っていた…」
 「オール怪談・40」からの再録。タイトル・ページをご覧になりたい方はそちらにどうぞ。

・小島剛夕「恋ヶ窪」
「治承四年(1180年)、武蔵野原の中の紫窪という宿場。
 畠山次郎重忠と、知己の熊谷の住人次郎直実は、源頼朝の本陣に向かう途中、紫窪で一泊した。
 次郎直実は、そこの女郎宿で、今は水汲み女に身を落とした千依姫(ちよりひめ)と再会する。
 千依姫とは相思相愛の仲であったものの、敵同士であった故、その親を討ち滅ぼしてしまったのだった。
 今や賤しめの女と逃げようとする千依姫を次郎直実は、落ちぶれようとも清く美しいままと心情を打ち明ける。
 出立(しゅったつ)の時まで共にいようとするものの、千依姫には水汲みの仕事があった。
 しかも、その日に限り、山際の滴り水が少なく、水が溜まる間に、次郎直実は出発してしまう…」
 「怪談・73」(つばめ出版)からの再録。画像はそちらのページで確認してくださいませ。
 冒頭の作家の描写が削られて、タイトルの下に簡単にまとめられてしまってます。ページの都合でしょうか?

・いばら美喜「黒い花」
「行方不明になった妹のことを尋ねるため、生花の師匠のもとを訪れた青年。
 結局、妹の行方はわからなかったが、師匠の屋敷で青年は妙なものを目にする。
 それは呼吸をし、人間の言葉を解する、黒い花であった。
 しかも、その花は動物のように動くという代物で、青年が近づくと、彼に飛びかかってくる。
 釈然としないまま、青年は、師匠のもとを去るが、上着を忘れていたことに気付き、引き返す。
 すると、師匠が弟子の女性の首を絞めて、気絶させるのを目撃。
 師匠は女性を抱えて、奥のビニールハウスに向かう。そこには黒い花が群生していた…」
 植物をテーマにした怪奇ものと言えば、小説だとジョン・コリア「みどりの想い」とジョン・ウィンダム「トリフィド時代」、映画だと「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」あたりが定番でしょうが、それ以外となると、ちっとも思いつきません…。(注1)
(ファンタジーと違って、ホラーは植物と相性が悪いのでしょうか? 「盆栽地獄」とか「マリモドローム」とか「呪いのトゲ地獄 血まみれサボテン・シスターズ」とか「ジアスタノイドの恐怖 人喰い大根おろしの侵略」とか、誰か描いてみませんか?)
 この作品はトリフィドにかなり近いです。知能もあれば、運動神経もあり、群棲…しかも、肉食。
 もしかすると、「トリフィド時代」の映画化『人類SOS』でも観て、思いついたのかもしれません。
 もしそうだとしても、換骨奪胎なんてケチな真似はせず、完全にいばら美喜ワールドです。
 ちなみに、描写はさらっとしてますが、かなりグロい話です。
 「オール怪談・35」からの再録。カラーの扉絵の画像はそちらのページで確認してくださいませ。

・竹田きくお「骨おり損のくたびれ儲け」
「麻薬の取引からの帰りにヘマをして、捕まってしまった男。
 男は刑事と共に電車(というかSL…)で刑務所に護送されることになる。
 麻薬の隠し場所を知るために、マフィアのボスは殺し屋を差し向け、刑事を殺そうとする。
 一方、男と刑事は駅で占い師の老婆から二人に死相が出ていると言われる。
 男は老婆に乱暴な態度を取るが、刑事は老婆を丁重に扱う。
 老婆は刑事にシガレットケースを手渡す。
 それは、死を呼ぶものと言われているが、死を目前にした者には死から守る働きがあると言う…」

 扉絵と浜慎二先生の「おふくろ」が「オール怪談・40」からの再使用です。

・注1
 日本映画で最強のトラウマ映画「マタンゴ」や、クソバカ・カルト・ホラー「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」もこのジャンルに入れるべきでしょうか…?
 ビミョ〜ですが、個人的にはアニメ版「うる星やつら」の「とろろに襲われるエピソード」も加えたいですね。
「夜が…また来る…」

・備考
 状態、良くない。ビニールカバー貼り付き、及びカバーに歪み。綴じ糸あり。p70のいばら美喜作品、pp130〜134の竹田きくお作品に大きなしみあり。

2014年10月14・16日 ページ作成・執筆
2017年3月17日 加筆訂正
2018年10月17日 加筆訂正

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