森由岐子「怪談かげろう地獄」(220円)
「影山城城主、仁羽勝重。
その娘、蓉姫は美しい娘であったが、時折、ヒステリックになり、意外な残虐性を見せる。
彼女は、家老大膳の息子、菊四郎に首ったけで、婿は彼と決めていた。
しかし、当の菊四郎は姫に隠れて、美穂という娘と相思相愛の仲であった。
ある日、蓉姫は自分の身体のあちらこちらに紫色の斑点ができていることに気づく。
医者の道庵の診察によると、姫は、皮膚が腐る「らい病」であった。
道庵は城のため、家臣のため、自分の身を隔離するよう提言するも、逆上した姫に刺殺される。
蓉姫は、愛する菊四郎のため、病気を治そうと決意。
父親の勝重は姫を哀れに思い、彼女の我がままを聞くが、病は広がる一方。
彼女は菊四郎を呼び出し、心変わりをしないよう、彼女を捨てないよう約束させる。
ある日、城に祈祷師のマヤが呼び出される。
マヤは不治の病を治すと言われており、勝重は藁をも掴む気持であった。
マヤは祈祷の後、姫の病をらい病と見抜き、一つだけ治す方法があると話す。
その方法とは、若い生きた娘の脳みそを十日に一人、一年間続けるというものであった。
仁羽勝重の家来達は城下町から若い娘をさらってきては、頭を一刀両断。
蓉姫は、病を治したい一心で、その脳みそを貪り食う。
ある時、菊四郎は城内で若い娘の悲鳴を聞く。
木陰に潜んでいると、忍者の恰好をした侍が娘の身体を脇に抱えて、洞窟の中に入り、また出ていく。
菊四郎が洞窟の中に進むと、中には脳みそのない娘の死体がゴロゴロ転がっていた。
美穂は菊四郎に城から逃げようと言うが、それなりの身分ゆえに、菊四郎はここから離れることはできない。
そんな時、蓉姫に二人の仲を知られてしまう。
裏切られた知った蓉姫は怒りと嫉妬に駆られ、その残忍性を露わにする…」
唐沢俊一&ソルボンヌK子「森由岐子の世界」(白夜書房)にて紹介された作品です。
唐沢俊一氏は「マンガ史上に残る大怪作」と絶賛しており、ちょっと言い過ぎは気はしますが、確かに、これは凄いマンガです。
残酷描写に関しては、貸本漫画ではトップ・クラスに入るのではないでしょうか?
森由岐子先生は当時、人気の少女漫画家でしたので、普通だったら、内容をマイルドかつ控えめにするものなのですが、全く頓着した様子はなく、徹底したグロ描写で貫かれております。(貸本漫画で、脳みそを食べる描写、他にもあったかな…?)
まあ、「男女の愛憎」が森先生の基本テーマですので、女性の嫉妬・憎しみを描写するために、あえてサディスティックな描写に徹したのかもしれませんが…。
ともあれ、非常に面白いので、復刻する価値は十二分にあると思います。(と言うか、復刻してくだされ〜。)
・備考
状態、非常に悪し。落書きが多くて、泣けてくる〜。ビニールカバーの剥がし痕、及び、カバーの痛み。前の遊び紙、テープ補修あり。pp13・81・92・94・114・115・120・126にボールペン(?)の落書き。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2022年7月19日 ページ作成・執筆