さがみゆき「怪談かさねが淵」(240円)



「養女である千賀子は、その美貌と優れた資質によって、花川流の家元を継ぐと目されていた。
 また、今の家元の息子の明夫との婚約も決まり、襲名披露さえ乗り越えれば、幸せを掴む目前であった。
 襲名披露の際の題目は「道成寺」。千賀子は清姫になりきるべく稽古に励む。
 が、おもしろくないのは、実子のみどりと加代。
 みどりは明夫と家元を手に入れるために、千賀子をノイローゼに追い込もうと企む。
 実は、千加子は「特異体質」で、強精剤として飲んでいた「まむしドリンク」に過剰反応し、自分が蛇に変身するという悪夢に悩まされていた。
 それに目をつけたみどりは、まむしドリンクの量を多くし、また、「うろこ風呂」(名シーンです!!)のギミックを使うなどして、遂にみどりを精神病院送りにする。
 とどめを刺すかのように、みどりは精神病院の医者に多額の金を渡し、千賀子は密室に蛇とともに閉じ込められるのであった。
 しかし、ある嵐の夜、度重なるショックのために、千賀子は蛇女と化す。
 医者と看護婦を殺害し、精神病院の火事に乗じて、千賀子は脱走する。
 一方、明夫は千賀子から心が離れ、みどりと急接近。  夏祭の日、みどりと明夫が、かさねが淵で逢引をしていると、火事で死んだと思われた千賀子が現れる。
 火傷のために更に醜くなった千賀子は、明夫に真実を明かし、みどりに襲いかかる。
 だが、明夫はみどりに加勢し、千賀子を棒切れで殴打、明夫とみどりは瀕死の千賀子をかさねが淵に沈める。
 千賀子は最期の力を振り絞って、呪いの言葉を残すが、その言葉通り、千賀子の呪いが花川流の人々に襲いかかる…」

 さがみゆき版「へび少女」。
 楳図かずお先生、古賀新一先生の蛇ものに影響されて描かれたものと推測されます。(マンガの中で先生方の名前が出てきます。)(注1)
 でも、そこは ベテランのさがみゆき先生、古典芸能をうまく織り込み、独自の作品を作り上げてます。
 また、嬉しいことに、同じテーマの「蛇塚の死霊娘」よりも、残酷描写・グロ描写は遥かにパワー・アップ!!
 陰惨な復讐譚としても、執着的なラブ・ストーリーとしても楽しむことができます。
 んにしても、ユニークなのは、「まむしドリンク」を飲んで、蛇になる…と思い込む主人公でありましょう。
 「特異体質」の一言で説明を済ませておりますが、大量に摂取して、蛇女になったのは怪奇マンガ史上、この御方のみでは?
 ほとんどの人は笑い飛ばすと思いますが、なかなか斬新は発想ではないかと考える次第。
 いやはや、こんな輩が大勢いたら、「○まむし」で有名な「○○漢方」は集団訴訟を起こされたかもしれませんね。(んなワケな〜だろ!!)
 とにもかくにも、さがみゆき先生の代表作の一つと言っていいでしょう。

 ひばり書房黒枠単行本にて大幅に加筆訂正され、出版されております。

・注1
 貸本では「いやだわ…わたし 楳図かずおの漫画をよみすぎたようね」(p27)となってますが、黒枠単行本では「楳図かずお」のところが「古賀新一」(p33)に変えられております。
 もしかして、宣伝のため?
 でも、医者のセリフ「楳図かずおの漫画のみすぎでしょう」(貸本ではp41、黒枠単行本ではp47)はそのままです。(チェック漏れか?)

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバー貼り付け。糸綴じあり。背表紙色褪せ。巻末のp156、イラストに剥げあり。後ろの遊び紙に、貸出票貼り付け。

2017年6月24日 ページ作成・執筆

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