古賀しんさく「太陽をぶん殴れ」(200円 1964年10月頃?)

「私立探偵、二ノ宮新吾は、若くして大手の会社の部長になった谷村という人物素行調査を依頼される。
 谷村は婚約者のある身でありながら、凛々しい男前の顔つきを整形手術でわざわざ醜くしていた。
 新吾と秘書の小桜加奈子は、谷村が休暇を過ごしているというN海岸に向かう。
 うまく谷村と接触した新吾は、谷村がもっと醜くなることを望んでいることを知る。
 そして、その願望の奥に、美代子という女性の存在があることも…。
 ある夜、谷村は海に飛び込みを図り、新吾に助けられる。
 その後、谷村はことの真相を打ち明けるが、それは異様な話であった。
 一年前、N海岸の同じ旅館に泊まっている時に、数年前に海難事故で死んだ妻、美代子と海底で再会する幻覚を見る。
 その幻覚の中で、妻は彼を夫を認めず、ひどく醜い人物が自分の夫だと話す。
 この体験の後、彼はまた妻と会う日のために、自分の容貌を醜くしようとしていたのであった。
 新吾達は谷村が精神に異常を来たしていると考えるが、谷村は錯乱の度を深め、旅館に放火、大火傷を負う。
 更に、谷村は病院を逃走し、ボートで沖に出て、溺死してしまう。
 事件は精神異常者の自殺で片付けられるが、実は、裏である企みが密かに進行していた…」

 古賀しんさく(古賀新一先生の本名は古賀申策)名義でひばり書房に描かれた、二ノ宮新吾シリーズ。
 ハードボイルド・ミステリーと銘打ってありますが、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーのノリを期待すると、絶対にズッコケます。
 ち〜っともハードボイルドではありません。
 当時は私立探偵が車をとばして、悪党相手にガンをぶっぱなしていれば、ハードボイルドだったのかもしれませんが、でも、やっぱり、絶対にハードボイルドではありません。
 あえて形容すると、キテレツなアイデアと、奇妙なユーモアの溢れるサスペンス&ミステリーでありましょうか。
 一応は、サスペンス&ミステリーでくくられると思いますが、それだけでは納まらない、「異色」な作風であります。
 まあ、巻末の読者コーナーで読者の質問に「異色的な作品」を描いていきたいと答えておりますので、当時から奇妙な要素を意欲的に取り入れていたのでありましょう。
 そこが怪奇漫画界で息長く活躍できた秘訣だったのかもしれません。

 ちなみに、この作品、古賀新一先生のお好きな「醜いお顔が大好きよ」ギミックが使われております。
 このギミックが計画的殺人につながる摩訶不思議さ…私の貧弱な日本語能力では説明することができません。
 「死にもの狂いA」にて再録されておりますので、興味のある方はどうぞ。

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け、また、それによる本体の歪み。糸綴じあり。小口研磨より、サイズ一回り小さし。pp22・23、ページ同士がくっついて、コマの中が小剥がれ。pp28・29、ボールペンとカッターらしきもので傷つけと落書き。pp34・35、目立つシミ。後ろの遊び紙、欠損。

2016年12月19日 ページ作成・執筆

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