古賀新一
「死にもの狂い@」(1972年12月25日発行)
「死にもの狂いA」(1974年8月15日発行)
収録作品
・「第一話 死にもの狂い」
「私立探偵、二ノ宮新吾は、秘書の加奈とデート中、スケッチブックを持った男の子と知り合う。
少年は絵を描くことが大好きで、ことあるごとに、スケッチブックに絵を描いていた。
父親はすでにこの世にないらしく、新吾が少年を母親にもとに送ろうとした途端、少年は逃げ出してしまう。
新吾と可奈が少年を探していると、少年が見知らぬ男の車に乗り込むのを目撃。
新吾は車のナンバーを控え、警察に届け出るが、後程、その車の持ち主が変死していると連絡を受ける。
男の死体に外傷はなく、死因は不明。また、少年の行方も皆目わからない。
喫茶店で、新吾と可奈がこの事件について頭を悩ませていると、少年の母親を名乗る女性が現れる。
彼女は、少年は、亡くなった一人息子の亡霊なのだと話し、これ以上、少年を探さないよう告げて、立ち去る。
そんな時、新吾は、知り合いの車のディーラーから、外車のマーキュリーモントレーを得意先に運ぶよう依頼される。
新吾と加奈が目的地に向かう途中、豪雨のために、タイヤが埋まり、二人は近くのホテルに駆け込む。
そのホテルには、あの少年が、ひげ面の男と一緒に滞在していた。
男は、医学博士であった、少年の父親の弟子であり、少年には放浪癖があると説明する。
新吾も同じくホテルに泊まることになるが、その夜、少年と関わった客が次々と怪死。
この「小さな死神」の秘密とは…?」
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オチは、「骸骨とせむし男」(「怪談特別増刊号」収録)と一緒です。
・「第二話 墓穴を掘れ」
「ふとしたきっかけで、新吾は、有名な実業家である竹内氏の息子、ミツオと親しくなる。
少年は母親を亡くしており、また父親は病の床に伏せていた。
秘書を務める、父親の弟が相手をしてはくれるが、一人っ子のため、ミツオは寂しくて仕方がない。
孤独なミツオは新吾になつき、新吾も快く彼の相手をする。
だが、秘書を務める、竹内氏の弟と外出した際、人相の悪い三人組にミツオをさらわれてしまう。
息子の身を案じるあまり、父親の病状は急速に悪化。
新吾は、三人組が潜伏しているらしい温泉地を訪れるのだが…」
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・「第三話 太陽をぶん殴れ」
「私立探偵、二ノ宮新吾は、若くして大手の会社の部長になった谷村という人物素行調査を依頼される。
谷村は婚約者のある身でありながら、凛々しい男前の顔つきを整形手術でわざわざ醜くしていた。
新吾と秘書の小桜加奈子は、谷村が休暇を過ごしているというN海岸に向かう。
うまく谷村と接触した新吾は、谷村がもっと醜くなることを望んでいることを知る。
そして、その願望の奥に、美代子という女性の存在があることも…。
ある夜、谷村は海に飛び込みを図り、新吾に助けられる。
その後、谷村はことの真相を打ち明けるが、それは異様な話であった。
一年前、N海岸の同じ旅館に泊まっている時に、数年前に海難事故で死んだ妻、美代子と海底で再会する幻覚を見る。
その幻覚の中で、妻は彼を夫を認めず、ひどく醜い人物が自分の夫だと話す。
この体験の後、彼はまた妻と会う日のために、自分の容貌を醜くしようとしていたのであった。
新吾達は谷村が精神に異常を来たしていると考えるが、谷村は錯乱の度を深め、旅館に放火、大火傷を負う。
更に、谷村は病院を逃走し、ボートで沖に出て、溺死してしまう。
事件は精神異常者の自殺で片付けられるが、実は、裏である企みが密かに進行していた…」
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楳図かずお先生に匹敵するキャリアを持ちながらも、その全貌をいまだ捉えられていない感のある大御所、古賀新一先生。
その理由の一つに、過去の作品がろくろく復刻されていないことが挙げられると思います。
貸本時代には、とぼけた味のある、奇妙なオチの短編で、ひばり書房での「怪談」「オール怪談」を、小島剛夕先生、浜慎二先生、いばら美喜先生等と支えました。
そんな古賀新一先生が、当時のアクション劇画に触発されたのか、ひばり書房に残したのが、「二ノ宮新吾」シリーズ。
と言っても、シリアスな内容でなく、やはり「とぼけた味」炸裂の、妙チクリンな作風であります。
その「二ノ宮新吾」シリーズから、怪奇色の強いものをチョイスして、単行本二冊に収めたのが、この「死にもの狂い」であります。
この作品を読むと、楳図かずお先生とはまた違った、古賀新一先生の「オンリー・ワン」な個性が窺え、興味深くあります。
ただ、この単行本はヒバリ・ヒット・コミックスでは再刊されず、なかなか読みづらいのが、残念なところですが…。
・備考
「死にもの狂い@」の単行本、非常にシミ多し。
2017年3月31日 ページ作成・執筆
2018年1月19日 加筆訂正
2018年9月26日 加筆訂正