「こわい怪談@」(240円)
収録作品
・浜慎二「吸血少女」
「和子の小学校では、女生徒が襲われ、血を吸われるという事件が立て続けに起こる。
校内での犯行でありながら、犯人はさっぱりわからない。
和子は、最近、転校してきた水上という少女と一緒に帰ろうとすると、彼女の家に招待される。
少女と召使の老婆だけが暮らす、薄暗く不気味な家、そのある部屋には老婆の絵が飾ってあった。
その絵は、少女のおばあさんの絵ということだったが、血で濡れていた。
また、和子は少女の写真を見つけるが、それはとても古びた写真だった。
少女はおばあさんの写真だと言うが、あまりにも少女に似ている…」
「怪談・87」(つばめ出版)収録の「灰色の少女」を改題したものです。
「灰色の少女」ではわかりにくいと考えたのか、「吸血少女」とダイレクトなタイトルにしております。
堅実なストーリー・テラーの印象の強い浜慎二先生ですが、この作品ではかなり分裂的。
和子が吸血少女の家で遭遇する数々の怪異は、しみじみと不気味です。
恐らく、物語よりも「雰囲気」を重視した結果なのでありましょうが、全編に漂う「不明瞭さ」がこの作品を奥深いものにしております。
私にとっては、「読めば、読むほど、奇妙さが際立つという、稀有な作品」なのであります。
・山上たつひこ「獲物」(1967年10月31日完成)
「山奥の小さな分校。
そこに勤める初老の教師は、生徒達に人体骨格の模型を買うことさえできない不遇を嘆く。
ある雨の夜、彼の暮らす小屋に、絶好の「獲物」がとび込んでくるのだった…」
・小島剛夕「まぼろしの群盗」
「ある部落に半死半生で辿り着いた青年。
彼は、うわごとのように「鬼が出た」と言う。
村人達が彼に食事を与え、話を聞くと、青年は小弥太と言い、茜という女性と駆け落ちして、都を目指していたと言う。
しかし、途中、小弥太はマムシに噛まれ、荒れたお堂で休む。
茜の心からの看病が功を奏し、小弥太は一命を取り留めるが、その夜、鬼が現れる。
小弥太は抵抗しようとするが、病み上がりの身の上、力及ばず、茜は鬼にさらわれてしまうのだった。
そのことを悔やみ、小弥太は幾日も嘆き暮らすが、そんな小弥太を庄屋の娘が見初める。
二人は愛を育み、祝言をあげることになるが、その頃、「風の様に押し入って、風の様に音もなく去ってゆく」風盗の噂が村で囁かれるようになる…」
「今昔物語」から採った話だそうです。
小島剛夕先生とつながりの深い白土三平先生も同じ内容で描いておりますが、個人的には、小島剛夕先生のバージョンの方が好きです。
・池川伸治「殺してしまえ」
「横暴なスター女優に憎悪の炎を燃やす女中。
彼女は主人の飲むコーヒーに毒薬を入れる。
だが、彼女の殺意を見抜いたスター女優は彼女にコーヒーを飲むよう強制。
無理矢理にコーヒーを飲まされた女中は、もがき苦しみ、血を吐き、息絶えるのだが…」
「怪談・72」収録の「奇痴留師(きじるし)」をタイトルを変えて、再録したものです。
唐澤俊一氏・編『カルトホラー漫画秘宝館 みみずの巻』に復刻され、よく知られているのではないでしょうか。
最後のコマの「きじるしだ!!」が「愚の骨頂」に修正されておりますが、「きじるし」って言葉、夏目漱石の『草枕』にも出てきてます。
意外と由緒ある言葉とか…?
・備考
状態悪し。カバー貼り付け、それによるヨレ。背表紙上部痛み。目次ページ(p6)に大きなシミがあり、向かいのページ(7p、浜慎二先生の「吸血少女」のタイトルページ)に小さな剥がれが幾つかあり。全体的に、目立つ小シミ多し。p50まで水濡れの痕あり。pp13・14(浜慎二作品)、コマにかかる裂けあり。浜慎二作品には、小裂け、小欠損多し。
2015年8月22・23日 ページ作成・執筆
2018年5月23日 加筆訂正