「怪談・72」(1964年頃/200円)
収録作品
・「白い女の子」
「外で一切遊ばず、人形作りが得意な女の子。
少女は、亡くなった母親の再婚相手に度々暴力を振るわれる。
見かねた家政婦は、中学校の教師にそのことを報告する。
教師がその家を訪れると、父親は少女を警戒していた。
どうも彼は少女の人形をひどく恐れているようなのだが…」
元ネタは、ロバート・ブロックの名編「子供にはお菓子を」。(詳しいことは「怪談・71」を参照のこと)
原作と較べ、結末をかなりマイルドにしており、パンチが弱いように思います。
あと、作中に出てくる教師のモデルは、古賀新一先生と推測しております。
「怪談・98」に再録されております。
・小島剛夕「花のかおりに」
「陸奥での戦から都に戻ってきた侍。
京は戦火に巻き込まれ、荒廃していた。
侍は想い人の夕姫を探し求めるが、屋敷の跡すらわからない。
日没前に、侍は蘭の花を手に持つ女乞食を目にする。
蘭は夕姫の好きな花であった。
侍は女乞食に蘭の花がある場所への案内を乞う。
女乞食が案内した先には、見慣れた土塀、邸、そして、夕姫がいた。
蘭の香りに包まれて、二人は再会するが…」
「怪談・84」にて再録されております。
タイトル表紙をご覧になりたい方はそちらのページへどうぞ。
・楳図かずお「深山(みやま)ざくら」
「吹雪の中、多勢の追っ手に追われる、若き武士。
彼は雪山の奥深くへと入り込み、そこで力尽きる。
だが、美しい娘に介抱されて、一命をとりとめる。
彼は娘を見るなり、その美しさに目を瞠る(みは・る)。
娘は、自分の美しさを愛でてくれる人を何百年も待っていた、と話す。
そして、追手の迫ってきた彼に、女性は武士に桜の枝を一本手渡し、逃げるよう勧める。
娘は、武士の着物をまとい、身代わりとなるのだが…」
「怪談・100」にて再録されております。
・江波譲二「紅の館」
「毎夜、同じ夢に悩まされる青年、夏圭介。
夢の中では、あらゆるものが深紅に彩られた部屋で、美登里という少女が彼に助けを求める。
そして、夢を見る度に、彼の背中は凄まじい痛みに襲われるのであった。
彼は友人に夢に出てくる風景と少女を絵に描いてもらい、自分の夢について調べ始める。
ある日、その風景は摩周湖近くにあるという手掛かりを得て、彼は北海道に向かう。
夢の中の同じ、洋館を探し当て、彼はその洋館を訪れると、そこの主人は彼のことを知っている様子であった。
彼はようやく、深紅の部屋で美登里と出会うことになるのだが…」
・古賀しんさく「怪奇な容貌」
「古谷秀男は、兄の死因を不審に思う。
兄は登山家であるにもかかわらず、恋人の京子とデート中に崖から転落死したのであった。
更に調べると、京子の前のボーイフレンドは二人、ショック死していることが判明する。
秀夫は、自ら開発した「相手の心を写す」カメラで彼女を撮影。
すると、写真に写っていたのは、世にも奇怪な容貌であった…」
・池川伸治「殺してしまえ」
「横暴なスター女優に憎悪の炎を燃やす女中。
彼女は主人の飲むコーヒーに毒薬を入れる。
だが、彼女の殺意を見抜いたスター女優は彼女にコーヒーを飲むよう強制。
無理矢理にコーヒーを飲まされた女中は、もがき苦しみ、血を吐き、息絶えるのだが…」
「こわい怪談@」にて「殺してしまえ」とタイトルを変えて、再録されております。
また、唐澤俊一氏・編『カルトホラー漫画秘宝館 みみずの巻』に復刻され、よく知られているのではないでしょうか。
最後のコマの「きじるしだ!!」が「愚の骨頂」に修正されておりますが、「きじるし」って言葉、夏目漱石の『草枕』にも出てきてます。
意外と由緒ある言葉とか…?
1964年度の漫画家の人気投票で、小島剛夕先生が一位を獲得したことを受けた特別記念号です。
非常に豪華な執筆陣で、全盛期のひばり書房の底力が窺えます。
また、巻末には「漫画オリンピック」(人気投票のこと)で優勝した小島剛夕先生や他の先生方のことをユーモアたっぷりに述べた文章もあり、当時の雰囲気が伝わってきます。
ちなみに、浜慎二先生による、見開きの絵はフランスのミュージカル映画「シェルブールの雨傘」(未見)でしょうね。
また、目次は「オール怪談・56」のものを過って印刷したようで、黒塗りにして、その周囲に目次を配置してます。
同時期に出版されて、混同したのでありましょうか?(まあ、ひばり書房らしい話です。)
・備考
ビニールカバー貼り付け。ビニ―ルカバーの剥がれた部分のカバー痛み。糸綴じあり。前後の見開きのノド、補強あり。pp59・60(江波作品)、落丁(これさえなかったら…)。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2018年5月23日 執筆・ページ作成