さがみゆき「神秘の扉がひらくとき」(220円)

「江原辰夫の別荘を訪れた、るり子と由起の姉妹。
 辰夫とるり子は恋人通しの仲であった。
 辰野の弟である春男に別荘のまわりを案内された時、洞窟を発見する。
 面白がって、三人は奥まで入り込むが、そこでミイラ化した死体を発見する。
 三人は辰夫に知らせるが、辰夫は警察には連絡せずに、この死体をミイラの研究に使いたいと言い出す。
 この提案にるり子は賛意を示すが、由起は反対。
 そこで、死体は埋めてしまうこととなったのだが、由起をだますために、口裏を合わせているようにしか由起には思えない。
 また、世間で騒がれている連続失踪事件のことも心に引っかかるのであった。
 一方、辰夫の研究室では、例の死体を使って、研究が行われていた。
 辰夫の横で手伝っているのは、るり子。
 彼女は、自分の今の美しさを永遠に保つために、ミイラの研究に協力していた。
 若い姿のうちに死んでいき、自分のミイラが人々の賛辞を受けること…これがるり子の夢だったのである。
 そして、そのためには、幾人かの犠牲者が出るのは致し方ないことであった。
 こうした辰夫とるり子の努力が実ったのか、遂に人間をミイラ化させる薬品が完成する…」

 約半世紀前の作品ですが、バッド・テイスト溢れる傑作です!!
 後半、マッドなキャラ達がヒロインを追っかけまわす描写は、当時の絵柄を差し引いても、迫力あります。
 そして、最も重要なのは「モダン」な作品であること。
 さがみゆき先生は古典に題材をとった、男女の愛憎渦巻く怪奇マンガの印象が強いのですが、この作品なんかは現今の漫画家さんがリメイクしても通用する内容かもしれません。
(と言うよりも、まあ、普遍的なテーマなのでありましょう。もしかしたら、怪奇映画の古典「肉の蝋人形」(未見)の影響がある可能性もあります。)
 もし、これが、本編後の読者のページにあるように、池川伸治先生・松下哲也先生、杉戸光史先生といった方々が繰り広げていた「殺人芸術談」(p133)に触発されて描かれたとしたら、当時の太陽プロの「凄さ」を示す一例であると思います。(私も是非拝聴したかったものです。)
 最後に、このマンガを読むと、菅島茂先生の大珍作「奇音」を彷彿します。
 まさかとは思いますが、影響を与えた、もしくは、受けたとか…こういうことをグダグダ考えるのも、ネクラな楽しみなのであります。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、それによる若干の本体の歪み。背表紙にビニールカバーとその下のカバーの破れと欠損。小口の上下と裏表紙にネズミのかじり痕あり。前後の見返しに貸本店のスタンプあり。本文中、目立つシミや汚れ多し、特に目立つのは、pp70〜78(何か食べ物らしきものが挟まれていて、液体が浸透している)。p121から巻末ページまで、針で幾つも刺したような痕あり。

2015年11月3日 ページ作成・執筆
2017年8月4日 加筆訂正

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