田中武彦「怪談赤目の男」(170円)



 収録作品

・「呪の壁画」
「健(正確な名前わからず)は、目の手術により、視力を得る。
 しかし、以来、彼は、他の人間には見えない、幽霊を視るようになる。
 彼に移植された眼球に問題があるのではないかと姉に言われ、健は献眼者について調べる。
 献眼者は、山田という老人で、死後、献眼するように遺言を残していた。
 健は、四谷にある山田の家を訪れるが、山田は身寄りのない老人で、家は荒れ放題。
 近所の人に老人について話を聞くと、老人は変わり者で、人との付き合いがない代わりに、猫を二十匹も飼っていたと言う。
 だが、ある日、その猫が皆いなくなり、気落ちした老人は十日後にぽっくり逝ってしまったのであった。
 健が家を調べようとすると、鎌を持った、骸骨姿の死神が現れ、健は家に逃げ帰る。
 死神は何度も彼の前に現れ、健が逃げ続けていると、いつの間にかまた山田老人の家がある辺りに来ていた。
 彼を心配して追って来た姉と共に、健はもう一度山田老人の家を調べる。
 そこで、黒猫に案内された彼らは、山田老人の猫を殺した犯人を知ることとなる…」

・「陽気な悪魔」
「荒れ地で一軒家を見つけた黒田和夫(注1)。
 そこにはちっぽけな悪魔が住んでおり、彼のリュックに忍び込んで、東京へとやって来る。
 悪魔が人間の血を吸うことを知り、和夫が悪魔をひねり潰そうとすると、悪魔は三つの願いを叶えると助命を請う。
 和夫の一つ目の願いは、大金を得ること。
 二つ目の願いは、世界一のボクサーになること。
 そして、三つ目の願いは…?」

 田中武彦先生に関してですが、当初、橋本将次先生ではないかと推測しておりましたが、ツイッターにてバナナ海峡様より、福田年兼先生ではないかという御指摘をいただきました。(注2)
 んで、改めて作品を読み直すと、ちっとも橋本将次先生の絵でないような…。(私の見識はその程度のものなんです。)
 いずれにせよ、私にはそれを検証する知識も脳ミソも持ち合わせておりません。
 より詳しい方々による検証をただただ待つだけなのであります。
 さて、「呪の壁画」(タイトルページでは「呪いの壁画」)に関してですが、「移植された眼球で異形のものを視る」というテーマです。(注3)
 それに「猫を殺された老人の霊の復讐」が絡まって、ストーリーが展開するのですが、展開がイマイチ分裂的。
 唐突なショック描写に振り回されていると、ラスト付近で、水木しげる・テイストのキチガイが現れ、ポーの「黒猫」になって終了。
 と、まあ、そんな作品なのでありますが、個人的には、半世紀前から「ペットを巡る騒動」があったことが驚きでした。
 ネタばれですが、老人の猫を殺したのは、ご近所の男二人で、猫の騒音に悩まされたため。
 昔からはた迷惑な隣人っていたんだな〜。
 「陽気な悪魔」は「三つの願い」をテーマにした作品で、故・星新一先生か外国の短編を参考にしたのでしょう。
 こういうテーマは結末が命なのでありますが、結末のキレはよくなく、残念。
 ただし、作中に出てくるチビ助な悪魔が妙にポップで印象に残ります。
 右上に、女性を襲う画像を載せておりますが、この女性は貧血を起こしただけなのでご安心を。(このセコいところがいいんです。)
 あと言い忘れておりましたが、この単行本のタイトルは「怪談赤目の男」ですが、その作品は収録されておりません。
 謎です…。

・注1
 黒田和夫という名前は、宏文堂で「青い死面」を描いた、黒田かずお先生のことでありましょう。
 レーベル・メイトのよしみでしょうか。

・注2
 バナナ海峡様。
 こんな小欄で失礼とは思いますが、お忙しい中、わざわざ御指摘いただき、本当にありがとうございました。
 また、何かお尋ねする機会がありましょうが、その際は、よろしくお願いいたします。

・注3
 似たようなテーマで、さがみゆき先生は「死霊少女の瞳」(貸本/ひばり書房)を描いておられます。
 「ミステリー・ゾーン」や外国の怪奇短編が元ネタなのかもしれません。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。前の遊び紙、p1、p3、鉛筆による文字の落書きあり。後ろの遊び紙、表紙に貼り付き。



2017年9月24日 ページ作成・執筆
2017年9月26日 加筆訂正

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