崇山祟「恐怖の口が目女」(2018年7月6日初版第1刷発行)

 収録作品

・「恐怖の口が目女」(2015年2月〜2016年12月にnoteで連載されたものを再編集)
「清心学園新聞部部長、美空すずめ。
 彼女に、唯一の部員、吉永百合子からスクープの情報が寄せられる。
 昨夜、百合子が友人の家から帰宅途中、暗い夜道で、マスクをした娘と出会う。
 彼女がマスクを外すと、その娘の口からは眼球がのぞいていた。
 すずめは一笑にふすが、一応、確認を取るべく、「口が目女」が目撃された現場に向かう。
 すると、まやもや、口が目女が出現。
 すずめは百合子を突き飛ばして逃走、一方の百合子は、考古学者、石原裕一郎に助けられる。
 石原裕一郎は、口亀地方を調べているうちに、邪馬台国の卑弥呼が「口が目女」であったことを突き止めていた。
 卑弥呼は国が衰退する時、三人の側室に「生」「死」「知」の玉を託し、自ら石窟へ姿を消す。
 そして、二千年後、その石窟が開かれ、卑弥呼が蘇えったのであった。
 石原はすずめと百合子に口が目女の調査への協力を依頼する。
 だが、調査はなかなか進まず、暗礁に乗り上げたと思われた時、百合子は学校で口が目女の娘を見かけ、その屋敷を突き止める。
 夜、三人は、その屋敷に侵入するのだが、そこで明らかになる意外な事実とは…」

・「対談 天久聖一×崇山祟」
・「あとがき」
・「おまけ 本当にあった怖〜い漫画 カマドウマになった少年」
「夜更け、塾からの帰り道、真一少年はマンホールに転落する。
 マンホールに閉じ込められた彼の身体は、闇の中で次第に変化していき…」

 帯に「平成最後の奇書」と書かれておりますが、「平成最後」かどうかはともかく、「奇書」であることは確かです。
 この作品の最大の魅力は「(貸本のような)異様なグルーヴ」(p251)と「先の展開を考えずに描いているライブ感」(p252)でありましょう。
 「note」に毎月、30ページずつ連載されたものですが、原稿料をもらって描くわけではないので、何を描こうが、徹頭徹尾、自由。
 「恐怖の口が目女」を描き切ることを決意した崇山祟先生は、締め切りまでにとにかくページを埋めるために、今まで蓄積してきた、雑多な知識、パロディ、怪奇マンガへのオマージュ、思い付きとしか思えないギャグ、突拍子もない妄想を大量に投入、その結果、ストーリーの前半は大迷走しております。
 読者は、混乱したまま、読み進めることになりますが、ストーリーは口裂け女もどきのB級ホラーから侵略SF、そして、壮大なスペクタクルへと発展し、トリッピ―なラストには唖然とする他ありません。
 この「予定調和」のなさは、漫画の方法論・技術論が確立してしまった今現在では逆に新鮮に感じるのではないでしょうか?
 また、作者の「試行錯誤」がリアルに刻印されているのも、味わい深いと思います。
 と、何かエラソ〜なことを書きましたが、正直言いますと、私の貧弱な感性と知識では、この作品の魅力をうまく伝えることができません。
 こんな駄文でも、とりあえず、興味を持って、読んでいただけたら、望外の喜びであります。

 ちなみに、「カマドウマになった少年」の主人公は、ムロタニツネ象先生のオマージュでありましょう。
 そして、「カマドウマ」なのは、もしかして、岬マヤ先生「恐怖!呪いの鍾乳洞」から?
 作中に出てくる「お墓で手首が300本」は、怪奇マンガ・ファンには言わずもがなでしょうが、さがみゆき先生「お墓に手首と指三本」のもじりです。
 他にもいろいろと元ネタを彷彿とさせるコマがあり、怪奇マンガ・ファンにとっては、いくらでも「深読み」…と言うか、妄想をたくましくさせることができるのが実にDEEP。

2018年8月26日 ページ作成・執筆

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