井出知香恵「闇のレジェンド総集編」(ギャグまん9月号増刊/1989年9月15日発行)

 アルケウス(精霊石)とは、処刑された魔女の子宮から取り出された、生命の種。
 これを飲んだ人間を魔女に変えるという、神秘的な伝説がある。
 この精霊石は数百年前、長崎の出島に来たポルトガル人によって日本に持ち込まれた。
 出島の近くに住む、お涼はこれを飲み、魔女となるが、時の政府に捕らえられ、人柱となる。
 そして、現代、アルケウスは、植物人間だった麻百合の体内へと入り、彼女は魔女として蘇る…。

・「アルケウス」
「半年後に取り壊される予定のリース・マンションには不幸を絵に描いたような三人の女が住んでいた。
 義母との関係がうまくいかず、また、恋人を寝取られた、孤独な女子大生、森下美晴。
 上司との不倫に悩むOL、上野あずさ。
 寝たきりの主人を介護しているらしい老婆、関口。
 ある日、川の工事の際に発破をかけた衝撃で、マンションの井戸水が赤く染まる。
 赤土か何かが水に溶け出したのだろうと考えていたが、以来、美晴が憎い相手を殺す夢を見ると、その通りに死んでいく。
 あずさはそれが原因で自殺し、美晴は、同じ大学で超心理学研究会の志賀峰夫に助けを求める。
 彼は「白魔術の一族」の一人で、先祖は江戸時代にアルケウスを追って、日本にやって来ていた。
 そして、マンションの建った土地には、江戸時代、魔女が人柱にされていたという。
 美晴と峰夫は魔女の復活を阻止しようとするのだが…」

・「オオカミ・ドリーム」
「短大生の菊村寿寿加は、満月の夜、自分が狼になり、人を襲う夢に見る。
 しかも、夢で見た通りに、犠牲者が出ていた。
 被害者達に共通するのは、昔、ある不良グループに属していたことで、彼らは寿寿加の父親を殺害していた。
 寿寿加は、自分が最愛の兄との血のつながりがないことを知り、自分のルーツを知るため、出身地に赴く。
 そこで、彼女は不思議な少女、麻百合と出会うのだが…。
 一方、生き残りの元・不良達は復讐を恐れ、寿寿加の兄、彰を拉致する…」

・「スイート・ベイビー」
「サラリーマンの中村俊一と渚。
 渚は半年前、記憶をなくして、海辺をフラフラと歩いていたところを俊一に保護され、後、同棲する。
 彼女の記憶は、ヨットマンの男性、彼女を養女に望んだ夫婦、そして、アリという言葉と、闇の中に光る眼だけで、彼女はその眼がとてつもなく怖い。
 更に、二人に不思議な少女がつきまとう。
 少女は、渚が三人も人を殺していると言い、「彼女がいちばん大切に思っている人のことを思い出させ」ないと大変なことが起きると忠告する。
 少女のせいか、渚は体調を崩すようになり、ある時、高熱を出して、臥せる。
 俊一が医者を連れてくると、そこには、渚と直談判をしようとした、俊一の前の恋人の無惨な死体があった。
 彼女を追って、麻百合と俊一はある孤島に行き、そこで渚の正体を目にすることとなる…」

・「マーメイド・ラブ」
「宇見彦は、ボートの転覆の際、彼の命を救った九鬼織江と婚約をする。
 だが、彼の前に麻百合という少女が現れて以来、彼を助けた女性は、九鬼織江ではないと考え始める。
 彼は織江との婚約を解消し、直感に従って、夜更けの水族館に忍び込む。
 そこで、彼は自分の命を救った女性の正体を知る。
 だが、彼女は、妖魔と化した九鬼一族によって狙われていた…」

・「メロウ・スプリング」
「雪山に母を求める高峰彩子。
 彼女の目的は、母に代わって、雪女となることであった。
 数百年も昔、高峰家の祖先がこの雪山で雪女に襲われる。
 命乞いをする祖先に雪女は、高峰家に娘が産まれたら、母親を雪山に寄こすよう交換条件を出す。
 雪女はこうして新しい身体に憑依して、長い年月を生きながらえてきたのであった。
 だが、彩子は雪女には何故か会えず、ひょんなことから、麻百合と出会う。
 魔女を名乗る麻百合と共に、彩子は雪女の棲家へ向かうが、氷の赤ん坊とその周囲に氷漬けにされた者達の姿があった。
 麻百合によると、雪女は正常ではないらしいが、その理由とは…?」

・「アゲイン」
「山本久美子には、前世の記憶があり、自分は能勢香織だと主張する。
 また、彼女は夢で、ある光景を視る。
 それは、ある家の居間の暖炉の裏に秘密の地下室があり、そこに腐乱死体が四体(大人の男女が二体、子供の男女が二体)横たわっているというものであった。
 ある夜、彼女を、小川勇という青年が迎えに来る。
 彼も、久美子と同じく、前世の広野卓巳としての記憶があり、夢の地下室を知っていた。
 二人はテレパシーで連絡を取り合い、夢に出てくる家を調べようとする。
 すると、二人の前に、麻百合という少女が現れる。
 麻百合は「アゲイン(再生)」した人物に興味があると言い、過去を知ることは同じ運命をもう一度繰り返すことになると警告する。
 しかし、久美子を狙っている何者かがいて、二人はそのまま家に戻るわけにはいかない。
 その者はかなりの力を持つ超能力者で、麻百合は異次元に飛ばされてしまう。
 一方、久美子と勇はその家を発見し、地下室に足を踏み入れる。
 彼らの前世とは…?
 そして、前世の彼らを殺した者の正体は…?」

 「スペクター」(芳文社)で連載された、「魔女もの」の隠れた佳作です。
 魔女だけでなく、狼憑き、人魚、雪女…と様々なネタを独自に料理しておりますが、基本はやはり「純愛」なのは井出知香恵先生らしいです。
 豪快なグロ描写もあり、怪奇マンガ好きには充分お勧めできる内容だと思います。
 あと、合間合間に、いしづよしひと先生の「怪奇妖怪奇奇怪怪」という四コマ漫画が載っております。それなりに面白いです。

 総集編は、単行本の「闇のレジェンド@」と、「闇のレジェンドA」で一話(「アゲイン」)を合わせた内容です。

2022年1月28日 ページ作成・執筆

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