成毛厚子「幻影(イリュージョン)」(1980年5月10日初版発行)

 収録作品

・「黒ねずみたちの行進」(1978年「増刊少女フレンド」1月号)
「PART T」
 宮田尚子は、鼻のおできを隠すために、大きなマスクをつけて下校する。
 彼女が乗った地下鉄では、乗客達が皆、奇妙なニヤニヤ笑いを浮かべていた。
 彼女は隣の車両に移るが、そこでも同様で、彼女は車掌に助けを求めるのだが…。
「PART U」
 船旅の途中、娘は、老婆とその孫の少女と仲良くなる。
 ある時、船が激しく揺れたことから転覆するというデマが船客達に広がる。
 船客達の間でパニックが広がり、その騒動で、老婆は混乱した船客達に踏み殺されてしまうのだが…。
「PART V」
 晴子は、中年の男性に、テレビ局に向かうバスについて聞かれる。
 快く答えた彼女に、男性は、今夜だけは何があっても外に出ないよう強く警告する。
 その夜、テレビにその男性が映るが、彼は地震研究の第一人者であった。
 彼は、明日の午前四時頃、本州に震度7以上の地震が起こると九割方起こると断言するのだが…」

・「闇のテーブルメニュー」(1977年「増刊少女フレンド」9月号)
「ACTT たまご」
 アニタは、出産を間近に控えた、姉のグレースを見舞いに病院へ行く。
 だが、彼女のお腹は大きくなく、大きな卵を大事そうに抱いていた。
 グレースは卵の中に自分の子供が入っていると話す。
 アニタは人間は胎生だと訴えても、誰も彼女の言葉に耳を貸さない。
 その夜、真相を確かめるため、アニタはグレースの病室に忍び込むのだが…。
「ACTU 魚」
 闇の中、春美はふと思い出す。
 活け造りの料理屋で、料理される魚の悲鳴を聞いたことを。
 そして、今、彼女達は…。
「ACTV ?」
 食道楽のハロルドとジョゼは、レストランを探して繁華街を歩く。
 すると、奇妙な中国人が、キャンセルが出たので、ただで「特別料理」を食べないかと二人に持ち掛ける。
 二人は中国料理を堪能するが、さて、メインディッシュの「特別料理」の中身とは…?

・「白昼夢」(1976年「週刊少女フレンド」4月5日号〜5月20日号)
「愛し過ぎた人形師の悲劇」
 人形師のアレンとエヴァは仲良し夫婦。
 だが、エヴァが勤め先の主人に襲われたことがきっかけで、二人の仲は危機に瀕する。
 エヴァに裏切られたと信じ込んだアレンは彼女を無視し、人形だけを愛するようになる。
 エヴァは夫を振り向かそうと思い悩んだ挙句、遂に…。
「いつわりの夫婦の悲劇」
 3月11日。
 平凡な一日のはずだったが、町では至る所で殺人が繰り広げられる。
 交番に駆け込んだマミは、巡査から今日が「特別な日」と教えられる。
 人口増加を抑制するため、この日だけは、殺したい人間を一人だけ殺すことが許されているのであった…。
「殺意をいだいた女の悲劇」
 病弱な故に、幼い頃から床を離れられない娘。
 妹の多重は姉に献身的に尽くすが、姉にとっては妹の献身さえも憎らしい。
 ある夜、姉は多重がこっそりお百度参りを踏んでいることに気付く。
 妹が自分の死を願っていると思い、逆上した姉は多重に毒を盛るのだが…。
「おごれる人類の悲劇」
 ある男子学生が理科の時間に発見した、奇妙なカエル。
 そのカエルが人の頭に跳び乗ると、相手はカエルへと化してしまう。
 彼はそのカエルを使って、気に入らない連中をどんどんカエルに変えていくのだが…。

・「ハンティング・エージ」(1978年「増刊少女フレンド」12月号)
「浪人生の麻子は、近所の少年に、不要になったダーツ盤をあげる。
 彼はそれに夢中になり、ダーツの矢をパチンコで飛ばし小鳥を狩るようになる。
 麻子は「遊びで弱い動物を殺すのはかわいそう」と彼を諭すが、彼女の周囲で動物達が次々と姿を消していく。
 少年が友達達とよく観ていた「エンジョイ・ハンティング」のビデオの中身とは…?」

・「死神は夜来る」(1975年「別冊少女フレンド」3月号)
「ある夜、女子高性のマキは、憎い相手を殺す夢を見る。
 すると、夢に出て来た相手は、その夜の内に心臓麻痺で死んでしまう。
 次の夜は、自分のカンニングを目撃したクラスメートを夢で殺し、それが現実となる。
 彼女は、憎い相手や邪魔な相手を次々と葬ろうとするのだが…」

・「クモを見た!」(1975年「別冊少女フレンド」3月号)
「怪奇漫画家の留奈は、友人の祥子から秘密を打ち明けられる。
 祥子は、外科医だった兄の臨終の際、兄の口から蜘蛛が出てくるのを目にしたのであった。
 蜘蛛は屋根裏部屋へと向かうが、そこは蜘蛛の巣がびっしり張られていた。
 祥子が蜘蛛を観察するうちに、奇妙なことに気付く。
 蜘蛛の巣にかかった獲物の数だけ、近所で死人が出るのであった。
、彼女は蜘蛛が死の世界と何らかのつながりがあるのではないかと推測する。
 留奈は祥子に自分のところに来るよう勧めるのだが…」

・「幻影(イリュージョン)」(1979年「少年/少女SFマンガ競作大全集PART3」)
「男は、こじんまりした家と、愛らしい若妻の亜沙美に恵まれ、満ち足りた生活を送っていた。
 だが、交通事故で視力を失ったことから、今までの幸せは崩れ、指先で亜沙美の顔や髪をなぞっては、記憶のイメージを慰めとする。
 亜沙美の献身により、角膜が見つかり、彼は角膜移植の手術をする。
 しかし、視力を取り戻した彼は、何故か、人間の顔が全てグロテスクな花に見えるようになる。
 原因は不明で、どうも、角膜の提供者には人間の顔がそのように見えたいたらしい。
 亜沙美の顔も同様で、彼は絶望し、目から包帯を外さなくなる。
 ある日、家で彼はむせかえるような匂いに惹きつけられる。
 その匂いの先には、亜沙美がいたのだが…」

・「成毛厚子の実像」〜著者によるエッセイ
・「恐怖インタビュー」
・「なぜ卵なのか」〜著者によるエッセイ
・「スキャンダラス・クエスチョン」
・「仕事場風景」
・「全作品完全リスト」
・「成毛厚子讃」

 成毛厚子先生は、1970年代半ばから、講談社の「フレンド」を中心に、独特かつ洗練された怪奇マンガで異彩を放っておりました。
 この本は、成毛先生の初期作品を一望するにはうってつけの一冊です。
 マンガだけでなく、著者の写真(美人です)やエッセイ、インタビューも掲載されていて、読み応えはバッチリ。
 作品に関しては、講談社から出ている「白昼夢」(コミックロマンミステリー)や「31まいめの空白」(怪奇ロマンコミック)でも読めますが、不思議な味わいの「幻影」の単行本収録はこれだけではないでしょうか?(他にもあったら、ごめんね。)

2020年9月16日 ページ作成・執筆

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