石井まさみ「世にも不思議な物語@」(1992年11月25日初版発行)

 収録作品

・「少女首つり症候群」
「石堂みゆきは多摩市の希望が丘高校の一年生。
 父親は石堂寺の住職で、彼女は父親と同様、「人の死を霊視できる能力」を持っていた。
 ある日、彼女は同じクラスの野島ナナ、立野亜紀、小暮京子の三人と丹沢山へハイキングに行く。
 父親は以前、三人に会った時、「不吉な影」がつきまとっていたと警告するが、みゆきは自分には視えなかったので気にしない。
 ハイキングの最中、ナナは戯れに小川に入る。
 すると、鬼婆のような中年女性の霊がナナにとり憑き、彼女を滝の方へ押していく。
 みゆきがお経を読んで、事なきを得たものの、今度はお昼に、ナナが横の木に手を当てて、首つりするのにちょうどいいなどと言い出す。
 亜紀もそれに同意するが、彼女の背後にはセーラー服姿の娘の霊が憑いていた。
 それからは何も起こらず、四人は夕方無事に帰宅するが、その夜、ナナが自宅で首つり自殺をしたと京子から電話がある。
 みゆきは山で視た二体の霊の仕業と考え、その正体を探るが、肝心の父親が病気で入院。
 更に、亜紀や京子も自殺をほのめかすようなことを言い始める。
 みゆきは過去帳を見て、意外な事実を知るのだが…。
 怨霊の正体は…?」

・「奇談ろくろ首」(小泉八雲・原作)
 名著「怪談」収録の「ろくろ首」を忠実になぞっております。
 ラストをちょっと付け足しておりますが、これを蛇足と言うべきかどうか悩むところ…。

・「おいで、おいで…」
「人気ロックシンガー、尾先ゆたかの急死。
 真美は千葉県館山市の実家でそのニュースを聞き、姉の清美について心配する。
 清美は美容師になるため、東京で住み込みで働いており、尾先ゆたかの熱狂的なファンであった。
 そのニュースが報じられた時、姉の清美が実家に戻ってくる。
 彼女は普段着で、しかも、裸足であった。
 彼女は尾先ゆたかの死を既に知っていたが、悲しんでいる様子は全くない。
 彼女は家族に向かって、「いいところにいこう」としきりに誘う。
 その夜、清美は実家に泊まることになるのだが…」

・「アニサキス」
「日向子は女子短大の学生。
 彼女は、男にふられたことをきっかけに、ダイエットを決意する。
 スポーツや食事制限をしても、大した効果が出ず、へこんでいた時、友人の千秋に肉の代わりに魚を食べるよう勧められる。
 それから、毎日、刺身を食べ、日向子はスリムになる。
 だが、彼女は最近、猛烈な腹痛に悩まされていた。
 腹痛は刺身を食べると収まるため、彼女は刺身を食べまくり…」

・「岩子生変」
「東京四谷にある丸菱商事本社。
 中沢邦彦は社内の評判も良く、仕事に関しても有能で、しかも、女子社員からはモテモテであった。
 彼は係長から課長に出世しただけでなく、社長令嬢との婚約の話も持ちかけられる。
 だが、彼には岩子という女子社員と愛人関係にあった。
 岩子は社内でも最も冴えなかったが、結婚するという約束を信じ、三年もの間、彼に肉体を与え続けていた。
 彼女は決して彼とは別れようとはせず、中沢は一計を案じる。
 まず、彼は岩子に整形美容を勧め、大学の先輩が経営しているタカハシ美容整形外科を紹介する。
 手術を受け、岩子は美しく生まれ変わる予定であったが、顔中に醜い傷痕を残され、更には、脱毛剤を飲まされ、髪は抜け落ちていしまう。
 更には、手術を担当した医者にレイプされ、それを目撃した中沢は一方的に岩子に別れを告げる。
 後に、岩子は全てが中沢と医者の企みだと知り…」

 石井まさみ先生はエロ漫画家として(恐らく、最も)知られておりますが、怪奇マンガとも深い関わりがあります。
 一番有名なのは、レモンコミックス(立風書房)での二作品(「恐怖!ゾンビのいけにえ」「恐怖!呪いの鍾乳洞」)で、妙なハイテンションと天然な脱力感を併せ持った、何とも形容のしがたい味わいのあるものでした。
 「世にも不思議な物語@」は石井まさみ・名義でのホラー短編集で、レモンコミックスの作品ほど、とばしてはおりませんが、それでも、独特のオーラのある作品ばかり。
 中でも、「アニサキス」は『蟲ホラー』の怪作で、ラストでは逆「スクワーム」をしていて、感心しました。
 また、尾※豊の死を扱った「おいで、おいで…」も単なる幽霊譚かと思いきや、狐憑きが捻じ込まれていて、ヘンな味わいです。

 なお、「世にも不思議な物語A」は出版されなかった模様です。
 石井まさみ先生にはレディコミ雑誌でホラー系・サスペンス系の作品が多くありますが、単行本化には全く恵まれておりませんので、何らかのかたちでまとめて読めるようになることを祈っております。

2023年3月7・14日 ページ作成・執筆

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