「オール怪談・45」(190円)



 収録作品

・いばら美喜「みな殺し」
「休暇を取って、帰省中の刑事。
 彼の父親が首を切断された死体となって発見される。
 死体の横には、明晩八時に刑事の家族をみな殺しにするとの書置きがあった。
 そして、翌日の午後八時過ぎ、家の前で刑事と警官達が待ち受ける中、犯人が現れる。
 犯人は、強盗殺人で服役中の脱獄囚であった。
 彼には、逃亡中、刑事に追跡され、事故に遭い、家族を亡くした過去があった。
 元「皿廻しの芸人」だった腕を活かし、脱獄囚は復讐を果たそうとする…」
 「SF&怪談」(ひばり書房黒枠)にて再録されております。
 また、唐澤俊一氏・編「カルトホラー漫画秘宝館 かえるの巻」にも復刻されてまして、いばら美喜先生の数ある短編の中でも傑作中の傑作です。
 いばら美喜先生の作品を読んだことがないけど興味がある、という人がいたら、何はともあれ、まず一番に読んでください!!(復刻版は容易に読めます。)
 これを読んで、腰が抜けちゃった人は、次は「カルトホラー漫画秘宝館 みみずの巻」の「港町」。
 その次は、菊地秀行氏・編「貸本怪談まんが傑作選 妖の巻」収録の「焦熱地獄」と、同じく「貸本怪談まんが傑作選 怪の巻」収録の「印画紙」。(このあたりはちょっと入手が難しいかも…。)
 ここまで来ると、中毒症状を起こして、もっともっと読みたくなるかもしれませんが、辛抱強く復刻をお待ちください。
 いばら美喜先生は、今、真に評価・復刻されるべき漫画家であります。(と言うか、評価が遅すぎます。)
 今後、作品集等、どんどん出るように祈ってます。

・小島剛夕「島抜け」
「夏、田舎の港町。
 浅吉と言う男が、兄弟分だった常吉の家を訪ねる。
 浅吉は常吉の両親と許婚に、犯罪者が流される佃島での出来事を話す。
 常吉は、江戸にいた頃、むかでの伝次という悪党と関わりを持ち、共に遠島になった。
 蒸し暑い日、津波が起こり、伝次はこれを機に島抜けしようとする。
 断る常吉に、伝次は島抜けに付き合うよう無理強いする。
 常吉を助けようと、浅吉は伝次の後頭部を棒で殴り、常吉と高台を目指すが、波に飲み込まれてしまう。
 そして、常吉は行方不明になり、助かったのは浅吉だけであった。
 常吉の最期を知らせてくれた浅吉を、両親は常吉の代わりとして家に置く。
 浅吉はその家の主人に納まるが、十年後、蒸し暑い日…」
 「オール怪談・75」にて、「帰らざる男」を改題して、再録されております。
 目次の後の紹介ページはまた別のものですので、ご覧になりたい方はそちらのページへどうぞ。

・サツキ貫太「黒蝶荘」
「あるアパートに住む、新人ピアニストの白崎栄一。
 朝から晩までピアノを弾いたために、アパートを追い出されようという矢先、ピアノの音色を耳にしたジョーンズと言う外国人が訪ねてくる。
 ジョーンズはアメリカの有名な教授であり、厨子にある彼の邸、黒蝶荘でピアノの勉強をするよう栄一に勧める。
 渡りに船と黒蝶荘に移った栄一は、衣食住全てを保証されるが、一つだけやるべき仕事をあった。
 本館の裏の別館に住まう彼は、朝の6時、昼の12時、晩の6時に二階の壁にある小さな窓のところに食事を運んでいき、三十分経ったら、食器を下げるよう言われていた。
 また、その時以外には、二階には上がらないよう厳命される。
 毎度毎度皿は空っぽになっており、時々、女性の着物を持って行くと、着替えた着物が置いてある。
 徐々に栄一は二階に誰が住んでいるのか気になっていき、ピアノの練習も手につかない。
 ある夜、栄一は意を決して、二階の部屋を探りに行くのだが…」
 サッパリしない内容ですが、妙に腺病質な描線とマッチしており、これはこれでい〜かも。

・北風三平「へんてこりんな客」
「丘の上の屋敷に住む、自称医者の青年。
 父親は有名な医学博士であったが、青年の方はオツムがちょっと足りなく、日々ワケのわからない薬の開発に熱中していた。
 ある夜、三人の男が彼の屋敷を訪れる。
 彼らは泥棒で、あるデパートの金庫から大金を盗み出した後、各々トラブルに見舞われ、感電したままになったり、舌がなかったり、血の出ない身体になってしまっていた。
 彼らは青年に治療を依頼するのだが、実のところ、彼らは…」
 奇妙かつ味のある短編を描かれた北風三平先生ですが、この作品もまあまあ面白いです。(ややあっさりしている感はありますが。)
 どうも、この作品は、有名なブラック・コメディー「マダムと泥棒」(英/1955年)の影響下にあるように推測しております。

 扉絵は、「オール怪談・74」に流用されております。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年5月9日 ページ作成・執筆

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