池川伸治「双生児の鬼」(220円/1967年8月31日完成)
「松本菊代と玉代(右目の下に黒子がある方)は心の通じ合った双生児。
生物学者、巣鴨公一博士はこの双子に目をつけ、恋人で助手である真木子を用い、双子を自分の屋敷に招待する。
巣鴨博士は、二人の飲むコーヒーにこっそり実験中の薬を混ぜる。
玉代には「心の美しくなる薬」を、菊代には逆の効果の薬を…。
翌日、玉代は何もかもが光り輝いていているように見え、何だか無性にハッピー。
一方の菊代は、どうにもこうにも気持ちが沈み、一日中ふさぎ込んでしまう。
巣鴨博士によると、心を美しくすればするほど、美醜に敏感になり、また、他の生物の気持ちにも反応しやすくなると言う。
玉代で実験した後、巣鴨博士は菊代にも同様の実験を試みる。
それは、五年前に殺人があった場所の慰霊碑を触らせるというものであった。
暗い気持ちに過去の怨念が反応し、菊代は狂乱状態になり、その場から走り去ってしまう…」
意味不明なところが一部(いや、多々…)あるのですが、なかなか面白い作品です。
個人的には、当時の世相がかなり反映されている気がします。(「ヒッピー族」という言葉が出てきます。)
1967年には、ロジャー・コーマン監督「白昼の幻想」(原題「The Trip」/脚本はジャック・ニコルソン!!)が制作された年でありまして、「心の美しくなる薬」を飲まされた玉代の描写は、どう見てもLSDをかじっているようにしか見えません。
私の勘繰り過ぎなのでしょうが、もしかしたら、トリップの心象風景をかなりリアルに捉えているかも…。(テキト〜言ってます。)
一つ、残念なのは、双生児の一人がどんどん心が明るくなり、もう片方の心が暗くなる…そして、遂に悲劇が!!…といった感じでストーリーが進むかと思いきや、中途半端なまま、後半、復讐譚となるところです。
それも、クライマックスの「ホネホネ・ナイアガラ」(注1)でどうでもよくなります。(ドリフのコントかよ!!)
是非とも、遊園地ではアトラクションとして取り上げていただきたいものであります。
「怪奇貸本奇談シリーズ」の一冊として、「花の百合子・毒の奇理子」・「炎の奇理子」と共に復刻されております。
・注1
「アストロ球団」の「人間ナイアガラ」にインスパイアされて命名。
・備考
カバー貼り付け。ビニールカバーの剥がし痕あり。シミや汚れ、幾つかあり。
2016年3月30日 ページ作成・執筆
2021年9月28日 加筆訂正