古賀新一「エコエコアザラクG」
(1977年8月10日初版・2013年12月5日19版発行)

・「ホクロのある男」
「郊外のとある団地。
 高校三年生の信彦の向かいの団地には、右目の下にホクロがある以外は彼にそっくりな男が住んでいた。
 そいつは、バスでは痴漢をするは、飲み屋にツケはためるはとふしだらな男で、信彦は彼と一緒にされて、団地の住人に白い目で見られてしまう。
 ある日、やけ酒を喰らって、帰りが遅くなった時、彼は、帰宅途中、チンピラに殴られたというふりをする。
 計画はうまくいくが、父親が警察に電話をかけた時、その暴力を振るったらしき男が警察署にいるという。
 警察署に行くと、そこにいたのはホクロのある男で、泥酔して大暴れして、誰を殴ったのか記憶にないらしい。
 信彦はホクロの男から多額の慰謝料を巻き上げるのだが…」

・「はく製コレクション」
「祖父母の田舎を訪ねた黒井ミサ。
 途中、禁猟区で撃たれた保護鳥のソデグロヅルを助ける。
 祖父母の家に連れて行くが、素人ではどうしようもできず、山奥の妙光寺を勧められる。
 そこの和尚は動物が大好きで、獣医顔負けであった。
 ミサは妙光寺に行き、ソデグロヅルの治療をしてもらう。
 しかし、ソデグロヅルは回復したのも束の間、それを狙うハンターに射殺される。
 ハンターはミサを自分の家に連れて行き、自分の剥製コレクションを自慢する。
 だが、ミサは大したことないと鼻で笑い、妙光寺にはもっと凄いコレクションがあると話す。
 ハンターは、それを盗み出そうと考え、ミサは、座禅の時間がチャンスと教えるのだが…」

・「予告された殺人」
「祖父母の家から町に遊びに出たミサは、そこで、クラスメートの貞男の父親と出会う。
 彼の父親は一年前から行方不明になっていた。
 ミサは理由を聞くと、父親は、誰かに殺されるからと答える。
 彼が入院生活を送っていた頃、夜中にテレビが突然つき、射殺された自分の姿が映る。
 以来、彼は死に怯え、ノイローゼになって、遠く離れたこの場所に住むことになったのであった。
 ミサが、彼を恨む人物を尋ねると、一人だけ心当たりがある。
 それはヤクザの鬼村という男で、亡き妻の不倫相手であった。
 鬼村は、会社の重役であった貞男の父親を強請るが、逆に通報され、刑務所に入れられる。
 貞男の父親は殺られる前に殺ろうとするが…」

・「首が落ちる」
「山奥の学校。
 放課後、黒井ミサが、財布を取りに学校へと戻ると、理科室の方から妙な物音が聞こえる。
 ミサが理科室を覗くと、骸骨の標本から頭蓋骨が落ちる。
 元になおしても、頭蓋骨はまた落ち、歯ぎしりのような音を立てる。
 ミサは逃げ出すが、途中、担任の花本先生と出会い、このことを秘密にするようきつく言われる。
 だが、翌日、クラスメート達に喋ってしまい、皆で理科室に行くことになる。
 理科室には花村先生が待っており、生徒達に骸骨の秘密を打ち明けると言う。
 その骸骨は、去年まで校長だった、花本先生の父親のものらしいのだが…」

・「歌手と殺人者」
「黒井ミサは冬の海辺を訪れる。
 去年の夏、彼女はそこである青年と出会ったのだが、彼のことが忘れられない。
 ミサが思い出に耽っているところに、当の青年がギターで弾き語りしながら、やって来る。
 彼の名は東條武といい、歌手志望であったが、誰も彼の歌を認めてはくれなかった。
 ミサは彼を励ますが、以来、彼に次々と幸運が舞い込み、レコードを出すこととなる。
 そのために、彼は東京に出ることとなるが、東京には嫌な思い出があった。
 二年前、歌手になろうと上京したものの、一文無しになり、強盗殺人を犯していたのである。
 彼の不安をよそに、彼はとんとん拍子に有名になるのだが…」

・「雪山の亡霊」
「雪山に来た、黒井ミサ達一行。
 スキーの最中、ミサは、雪の中から子供が現れるのを目にする。
 子供は三、四歳ぐらいで、顔中に包帯を巻き、包帯の間から眼がぎらぎら光っていた。
 ミサは子供がお化けではないかと疑うが、その話を聞き、ロッジの女主人は顔色を変える。
 実は、今朝、ロビーの暖炉の前に、その子供が座っていて、「お願いだから早く助けて…今にこごえて死んでしまうよ…」と呟いていた。
 そして、彼女の子供は冷蔵庫の中で死んでいたのである。
 翌日、ミサは子供がリフトに乗っているのを見て、子供がお化けでないことを確信。
 子供の後をつけると、彼は病院へと入っていく。
 彼の行動の理由とは…?」

・「予言と初手柄」
「図体は大きいが、気が小さい警察官。
 彼は、初手柄をあげるため、黒井ミサに事件を予言してくれるよう頼む。
 でも、ちょっと危険な事件になると、途端に意気地がない。
 そこで、ミサは彼の性根を直すために、黒魔術をかける。
 ミサは工事現場で彼をワイヤーロープでぐるぐる巻きにした後、カチカチ音がする花瓶を置いて立ち去る。
 その花瓶は時限爆弾で、彼は吹き飛ばされてしまうのであった。
 その夜、彼が巡視をしていると、ミサが予言したビルで金庫破りを発見するのだが…」

・「初恋の人」
「ミサの今夜の客は、逃走中の凶悪犯。
 彼と言葉を交わすうちに、小さい頃の初恋の女性の話になる。
 彼女の名は美香で、ミサが彼女について占うと、行き止まりの道の先にいるらしい。
 彼がそこで待っていると、パトカーがやって来て、婦警に声をかけられる。
 慌てて逃げ出した彼がミサに文句を言うと、その婦警が美香だという。
 しかし、その婦警には小さい頃の面影は全くない。
 と、そこに、彼の思い出にそっくりな美香が、子供を背負って、現れる…」

・「魔法のつえ」
「逃走中の銀行強盗殺人の男女二人。
 彼らは山中に車を隠し、そこから徒歩で逃げることにする。
 山奥で民家を見つけ、彼らはそこを隠れ家にしようと考えるが、そこには知恵遅れらしき少女(黒井ミサ)が一人で住んでいた。
 強盗殺人犯の男女は元・魔術師で、女性を窯に入れた後、脱出させ、少女を感心させる。
 少女は強盗殺人犯の男を魔術師を思い込むのだが…」

 「はく製コレクション」と「初恋の人」は笑っちゃいました。
 これは古賀新一先生だけの「オンリー・ワン」なセンスです。
 古賀新一先生の怪奇マンガは独特なユーモアをあわせ持ったものも多く、そこはもっと評価されるべきだと思っております。

 ちょびっと考察。
・「ホクロのある男」→ヘンリイ・スレッサー「金は天下の廻りもの」がもと。「ヒッチコック劇場」で観たのでしょう。アレンジしておりますが、原作のオチの方が良いと思います。
・「首が落ちる」→古賀しん一・名義「骸骨とせむし男」(「怪談 増刊号」)のリメイク。オチは、古賀しんさく・名義「怪奇な容貌」(「怪談・72」)です。
・「初恋の人」→古賀しんさく・名義「もてない奴」(「怪談・74」)のアレンジ・バージョン。こんなのアリかよ〜。
・「魔法のつえ」→ロバート・ブロック「魔法使いの弟子」が元ネタ。古賀しんさく・名義「おれは狂人じゃねえ」(「オール怪談・44」)という作品もあります。

2021年3月5・8・9日 ページ作成・執筆
2021年5月12日 加筆訂正

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