「怪談全集」(1970年8月17日発行)

・浜慎二「猫ぎらい」
「猫嫌いが高じて、目にしただけでブチ殺さずにいられない青年。
 彼の猫嫌いは、彼の弟が猫のために死んだと思い込んでいることが原因だった。
 また、彼は、近所の洋服屋のショーウィンドーに飾られている少年のマネキンを弟と信じ、毎日、朝から晩まで眺めて過ごしていた。
 ある日、少年のマネキンが来ている服が、シャムネコの毛皮から作られていることを知り、ショックを受ける。
 その夜、弟が猫に殺される夢を見た青年は、洋服屋のショーウィンドーからマネキンを盗み出す。
 だが、彼が逃亡に疲れ、眠っている間に、マネキンは男児の死体へと変わる…」
 「怪談・85」からの再録です。
 いまいち、よくわからない話です。

・いばら美喜「町はづれに住む男」
「あまりに醜い風貌のために、あちこちで爪弾きにされてきた乞食の老婆。
 その老婆を、町外れに住む男は家に泊め、親切にする。
 男も醜い容貌のせいで、世間に相手にされず暮らしてきたのだった。
 男の親切に感じ入った老婆は、隣町に住む孫娘を男に紹介しようと言う。
 その夜、美しい娘が男を訪ねてくる。
 二人は結婚し、幸せな家庭を築くのだが…」
 「怪談・41」からの再録です。

・古賀新一「奇妙な男」
「黒川という殺し屋のもとに、差出人不明の小包が届く。
 中には、仕事の依頼状と、仕事への報酬金。
 大金にも関わらず、この仕事は「一匹のカラス」を殺してくれという、変わった依頼であった。
 どんな奇妙な依頼でも、仕事は仕事。
 殺し屋は、依頼主の住所のK島に向かう。
 依頼人を探すが、住所は山の中で、家なんかない。
 そこに、依頼主が殺し屋の前に現れる。
 依頼主の男は、片目が潰れ、身体中が傷だらけであった。
 彼はこうなった経緯を説明するのだが…」
 「オール怪談・23」(貸本/ひばり書房)からの再録(当時は「古賀しんさく」名義)。

・北風三平「底」
「雪山で自殺を図った青年。
 彼は、美しい娘に助けられる。
 その娘の家は、雪の中の落ち窪んだ底にあった。
 青年はそこから脱出しようとするが…」
 安倍公房「砂の女」に「雪女」を絡めた佳作。オチも効いてます。
 「怪談・55」(貸本/つばめ出版)からの再録。

・福田三省「呼ぶ屍(しかばね)」
「元・特攻隊の生き残りで、今は死体置き場のプールの管理人をしている男。
 彼は、同じく特攻隊の同期で出世した男を殺害して、プールに沈める。
 うまく死体を始末したものの、今度は暴力団から死体の始末を依頼され、手を貸すことに…」
 何と申しましょうか、ひどく殺伐としたマンガです。
 何故に二度も再録されたのか全く謎です。
 「オール怪談R」(貸本/ひばり書房)からの再録。また、「オール怪談・増刊」(貸本/ひばり書房)にも再録。

・さがみゆき「怪談草芽が宿」
「下総の国、真間の里。
 勝四郎は、お家の再興のため、恋人の宮木を一年後の秋に帰ってくると約束して、都へと旅立つ。
 しかし、実際は、出世欲に目が眩んだ勝四郎が、さる大臣の娘と結ばれるためであった。
 一年経ち、二年経ち…勝四郎が宮木を捨てたと周囲から諭されながらも、宮木は勝四郎を待ち続ける。
 ある時、村が戦に巻き込まれることになるが、宮木は家から動こうとしなかった。
 そして、戦乱により荒れ果てた村をさまよう青年が一人…彼は勝四郎であった…」
 タイトルでは「草芽が宿」となっておりますが、上田秋成「雨月物語」に収録の「浅茅が宿」が原作です。
 設定やら、マンガ中に出てくる短歌はそのまんまです。
 また、ラフカディオ・ハーン「和解」の要素が入っておりますが、これは恐らく映画の影響でありましょう。
 溝口健二「雨月物語」(1953年)、小林正樹「怪談」(1963年)は国際的にも評価の高い映画でありまして、当時の怪奇マンガにも影響を窺えます。
 とは言うものの、そこは「貸本怪奇マンガの女王」と呼ばれる、さがみゆき先生!!
 小島剛夕先生みたいに情緒たっぷりに終わらせるのではなく、ラストでグロ炸裂の「怪奇マンガ」にしております。
 これってハッピーエンド…なんですかね…?
 ちなみに、この作品のみ「書き下ろし」です。

・備考
 小口のシミがひどし。pp3〜9、中のページにまでシミが広がる。

 
2015年8月30日・9月1日 ページ作成・執筆
2018年5月23〜25日 加筆訂正
2021年8月26日 加筆訂正

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