杉戸光史「夢が死んでいる」(240円)



 収録作品

・杉戸光史「夢が死んでいる」
「ある町に、若く美しい娘が行方不明になるという事件が多発する。
 山本さくらの姉も同じく失踪。
 数日後、さくらの寝室の窓から転落死するが、その姿は老婆のようであった。
 そんな時、いとこの芋山権太郎が彼女に見舞いにやって来る。
 権太郎から香炉を贈られ、さくらは香を焚いて、眠りに就く。
 すると、夢の中に、素敵な王子様が現れる。
 さくらも、王女となって、彼と素晴らしい時を過ごすが、それは罠であった…」
 本気でヒドいです!!
 恐らく、石ノ森章太郎先生の影響なのでしょうが、エスパーの扱いがあまりに安直すぎて、絶句します。
 ただ、一つだけ、この作品には見所があります。
 それは「神宮司三郎」の若き日の姿が見れること。

 推理ゲーム好きにはおなじみの、ヘビー・スモーカーで顔色の悪い名物探偵でありますが、若き日はこんなにフレッシュマンでした。
 でも、作中では全く活躍のチャンスはなく、何の役にも立っておりません。
 人に歴史あり…と感じ入ります。(どうも同姓同名の別人と勘違いしている模様です…。)

・杉戸光史「うしろ姿」
「学生、今井与志雄は、通学の途中、少女の後ろ姿をしばしば目にする。
 と言っても、素知らぬ顔で追い抜いてしまうので、少女の顔を見たことがない。
 少女の顔への彼の妄想はどんどん膨らみ、ある日、意を決して、彼は振り向くのだが…」

・宮本光「雪とつるとおんなのこ」(1968年12月8日完成)
「ある病院。
 回復を祈りながら、千羽鶴を折っていた少女。
 だが、雪の日、残すところ、三羽で彼女は亡くなってしまう。
 少女の恋人が涙ながらに折り鶴を窓から飛ばすと…」
 この作品を描いた「宮本光」先生は、ひばり書房黒枠単行本で「せむし狂女」「血狂い少女」等を描かれた御方です。
 この本には、先生のプロフィールが書かれたページがあり、出身地や誕生日についても記載されております
 ここで興味深かったのが、「(昭和)42年(1967年)6月1日より太陽プロにはいり杉戸先生に師事」という記述(p163)。
 個人的な推測ですが、「宮本光」という名前は本名ではなく、ペンネームではないでしょうか?(本名についてはわかりません。)(注1)
 杉戸光史先生の宏文堂時代のペンネームが「宮本光」ですので、杉戸先生からペンネームをいただいた可能性があるように私は考えているのですが…。
 このあたりの詳しい事情をお知りの方がいらっしゃいましたら、情報を提供していただけますと、幸いに存じます。

・注1
 宏文堂時代の「宮本光」先生に関しては、宮本光「人形は生きていた」(貸本/宏文堂)を参照してください。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。後ろの遊び紙、貸出票を貼り付け。

2018年6月10・11日 ページ作成・執筆

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